メイン


□一話0
1ページ/18ページ

寂れた街、荒廃した建物、見掛けぬ人影…数百年前までは賑やかな街並みだったと、一体何れ程の人が信じるだろうか。肥沃な大地はもう、面影すら残っていなかった…



そんな荒れ果てた街並みを眺める様に三対の純白の翼を持った青年が、荒廃しても尚高く聳(ソビ)え立つビルの屋上へと降り立った。街を見下ろす其の眼差しは人々を慈しむ、優しげな色をしていた。


青年が降り立ち何れ程の時間が過ぎただろう。昼から夜の空へと変わるグラデーションが、辺りを橙に染めながら沈む太陽を追い掛けて行く。
不意に、青年は天使の気配を感じる。然し其れも一瞬の事。気の所為だと頭(カブリ)を振り払うも束の間、今度は悪魔の気配を感じた…流石の青年も自身と敵対した種族の気配には警戒せずにはいられず、腰にぶら下げた双頭の曲剣の柄に手を触れさせた。

身動き一つ取らずに気配を感じた方向を睨む。然し青年は違和感を覚える。何故天使の気配を感じたのだろう。何故悪魔の気配を感じたのだろう…



(何で今は人間の気配しかしねェンだ…?)



自問する間、ほんの一瞬に僅かなスキが生まれる。そのスキを狙っていたが如く、気配が動き出した。
刃が自身へ届く寸前、青年も鞘から剣を抜き応戦する。金属のぶつかる音が不気味な程静かな空に響いた…



.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ