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□真琴
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超至近距離恋愛のすゝめ*」続編



真琴が岩鳶スイミングクラブでコーチの手伝いを始めた日の夜。
千晴は真琴の家でプールでの子供たちとのやりとりを聞いていた。

「ふーん。面白そう。おれも手伝おうかな」
「だっ、だめだよ!」
「え?どうして」
「だって、子供たちの保護者が千晴を好きになっちゃったらどうするの!?」

真琴のくだらない嫉妬がまた出た。
胡乱な眼差しで千晴が真琴を見つめると、うぅ〜っと眉を下げて捨てられた子犬みたいに上目遣いで千晴を伺う。

「千晴の裸見られたくない……」
「裸じゃなくて水着姿!真琴、おれの水着姿をずっと裸だと思ってたってこと!?」
あまりに衝撃的な発言に目を丸める千晴に、真琴はあわあわと手を振った。
「ち、ちがう!今のは言葉のあや!水着でも見る人から見ればドキドキしちゃうんじゃないかなって思って……」
「おれより真琴の方が良いカラダしてるんだからそれはないよ」
「わ、わからないだろっ!とにかく俺は反対!」
「したいことは自分で決めるから」
「千晴〜〜っ!」

情けない声で千晴に縋るように抱き締める真琴を、惚れた弱味で甘やかしていると、つけあがった大型犬は欲を露にしてきた。
仕方ないなぁと結局真琴に甘い千晴はそれを受け入れて、甘い時間を過ごした。




次の日、見学したいと言った千晴に真琴はとびきりの笑顔でおいでよ!と言ってくれた。
真琴のカッコいい姿楽しみにしてるから、と千晴が告げると頬を染めて、頑張る!と真琴は張り切ってプールサイドへと駆けていった。

ああいうところが憎めないよな、と微笑ましく見学ブースへ向かい、真琴が小さい子どもを相手になかなか良いコーチぶりしているのを見守っていた。


数時間経ち、プールサイドからあがった真琴を迎えに行くと、誰かが真琴と話している声が聞こえた。
「本当に懐かしいね」
「うん。高校に入ってからはあまり中学の友達とは遊んでいなかったし、嬉しいよ」

「……真琴?」
「あっ、千晴!こっちまで来てくれたの?」
「うん」

誰と話しているのだろうと千晴が桃色の髪の少年を見ると、その少年は目を輝かせて、久しぶり!と千晴の肩に腕を回してきた。

「え、と?」
「中学の時、よく真琴やハルと一緒にいた貴澄だよ。千晴は別のクラスだったからほとんど遊べなかったけど、千晴もよく真琴やハルと一緒に居たよね」
決して騒がしい人ではないのに、口数が多いせいでどことなく気が引けた。
そういえばそんな人が居たかもしれないと納得して、あまり覚えてはいないけれど、久しぶりだねと返した。

「3人組は相変わらずまた一緒に水泳部なのかぁ」
「うん。大会に出るためにみんなで練習してる」
「……ふふ、なんだか嬉しいな」
「? どうして?」
「千晴とは中学時代ほとんど話せなかったから。話してみたいとは思っていたんだけど、真琴のガードが固くて固くて」
「ガード?」


「キスミ!!」

プールに真琴の声が響く。
真琴が長身のくせに上目遣いでこちらを見つめている。
あ、まずい。これ絶対嫉妬してる。

「そろそろ行かないと」
「あ、うん」
「あれ、なんかたくさん虫に刺されてるよ?」
ここ、といきなり指がうなじに触れて、思わず肩を竦ませる。

「キスミ!」
「あはは、じゃあまたね」
「うん」
ひらひらとキスミに手を振ると、その手を真琴に取られてしまった。
手を握る以上のアクションを真琴が起こしてくる気配はない。


「……つむじ風みたいな奴」
嵐のように騒がしくはないけれど、そよ風のように心地よくもない。とらえどころのないつむじ風みたいだ。
そう呟くと、ぎゅう、と抱き締められた。

「俺以外に触らせないで」
「あっちから勝手に肩を組んできたんだよ」
「それでも、」
「………あ、のさ」

気まずそうな千晴の声音に、真琴がちらりと千晴を見やる。

「さすがにここじゃ人が多いから……せめてロッカーとかで話さない?」
見学ブースから何人かがちらちらと二人を見ていて、しかもその中に真琴の教え子がいたものだから、真琴はパッと千晴を拘束していた腕を緩めた。


教員用のロッカーに着いた途端に抱き付いてくる真琴。
「ていうか、昨日キスマークつけただろ」
「えっ、なんで知って……」
キスマークを許してしまえば、嫉妬深い真琴は誰彼構わず嫉妬の対象と見なしてなし崩しになることをわかっていた千晴は、普段からマーキングを禁止していた。
それでも他の男を牽制するためだからとこっそり真琴はキスマークをつけているらしい。
……一応、怒っている素振りは見せておかないといけないな。

「あいつにキスマーク見られたんだけど」
「えっ」
「何で嬉しそうなんだ」
パッと顔を明るくした真琴を睨むと、またしょんぼりと肩を落としてしまった。
「う……だって、その、……ごめん」


大きな身体を丸めて悲壮感を漂わせないでほしい。
甘やかしてはいけないとわかっているのに、それを凌駕する庇護欲に負けてしまいそうになるじゃないか。


「座って」
抱きついたままの真琴に告げると、離したくないとでも言わんばかりに腕の力を込めたので千晴はベンチに強引に座らせた。
それでもやはり離してはくれないようで、真琴は立ったままの千晴の腹に頭を預けるようにして千晴の身体を引き寄せた。


可愛いなぁ。
……今回は真琴の粘り勝ちかな。

普段は見上げているはずの真琴を見下ろしているせいで庇護欲が掻き立てられる。

「まーこと」
髪を掻き分けるように何度も撫で付ける。
後れ毛を小さく引っ張ってみたり、頬をつまんでみたり。
普段ならば何するのと軽く嫌がるくせに、今は千晴の視線を自分が独占していることが嬉しいのだろう、真琴は目を瞑って口元に笑みを浮かべながら千晴のされるがままだ。


むくむくと愛しい気持ちが沸き上がってきた。
「真琴」
「ん?」

身体を屈めて額に唇を落とす。
ぽかんと口を開く真琴も可愛いとか思ってしまう辺り、相当の恋人馬鹿だなと千晴は内心で笑い声を噛み殺した。


「……千晴っっ」
ようやく思考回路が繋がった真琴の表情は歓喜に変わり、引き寄せる力が強くなった。
「わっ、ちょっ……んんっ」


喜びをそのままキスとしてぶつけられ、千晴は粘膜までこそぎとられそうなキスを受け止めるので精一杯だ。
敏感な舌先に吸い付かれ、ぴくりと快感に慣れた身体が期待する。
シャツの内側に侵入してくる不埒な手を拒めるだろうかとぼんやり考えながら、千晴は静かに目蓋を閉じた。



(……あ、またキスマークつけた)
(ごっ、ごめん!千晴がすっごく可愛くて、嬉しくて……)
(マーキング卒業はいつできるのかな……)


>>>
キスミくんは爽やかで、鈴木さんの落ち着いた声も素敵です。
でも中学時代に真琴くんの肩に手を回しながらもナナハル先輩に意味ありげに笑いかける辺り、ロマンチカの角先輩的なものを感じますね!
ナナハル先輩には真琴くんを狙ってるようにみせかけておいて、実はナナハル先輩目当て的な結末でもたいへん美味しいです。真琴くん狙いでもたいそう美味しいですが。
爽やかくんだと思ったのにあの行為で完全に腹黒度を見せつけてくれました。
次回の登場を楽しみにしてたんですが、出なかったですね……。

「超至近距離〜」の続編をリクエスト下さってありがとうございました!



↓以下腐カプ語り↓

アニメ11話のまこはるちゃんの喧嘩良かったですね!
進路を先に決めてしまったまこちゃん(しかも東京)に動揺するはるちゃん……。
喧嘩→別離→まこちゃんの盛大なるプロポーズというシナリオでもなんの違和感もないですね。
まこはるちゃんの結婚いつですか(^^)

宗百ちゃんのイチャイチャ挟んできて萌え死んだ!江ちゃんにあげると見せかけて宗介先輩に構って欲しいという無意識の行動ですか(^^)
宗百増えろ(ボソッ)
にとりんも増えろ(ボソッ)
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