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夕刻、7班のメンバーとアカデミーの前で待ち合わせをして、揃って一楽を訪れた。


昨日の夜はカカシさんに単独任務が入っていたので、誕生日を迎えてから顔を合わせるのはこれが初めてだった。
無事に戻った事は式を通じて知らされていたけれど、実際に生身の彼を見ることが出来てやっと胸のモヤモヤが晴れたような気がした。




一楽での一時はとても賑やかに、そして和やかに流れた。


途中、カカシさんの誕生日を祝おうとしたガイ先生が現れるという出来事もあって。
ガイ先生にカカシさんと間違えられ、突然背後からホールドをくった俺は思わず口の中のラーメンを吐き出してしまった。

突然の闖入者の登場と俺の失態に子供達は阿鼻叫喚の大騒ぎ。
カカシ先生はそのゴタゴタに紛れて一楽特製スペシャルラーメン・バースディバージョンを完食し、またもや素顔を見逃したあいつらから大顰蹙を買っていた。





「ハッハッハッ!子供達の間に座るのはイルカだと思ったものだからなァァッ!許せッ、イルカよッ」

ガイ先生が白い歯を輝かせて何時ものポーズを決めている。
それを子供達は胡散臭そうに眺め、カカシさんはため息を落としながら見ていた。

「アンタねぇ、もうちょっとマトモな登場の仕方しなさいよ…イルカ先生が大変な事になっちゃったじゃない」
「ムッ?さてはカカシ、お誕生日席とやらに座っていたのだなァァッ?! 流石は我がライバルッ!やる事がナウいゾッ!!」

そう言いながらガイ先生はバッチリウインクをした。
途端に子供達の間から悲鳴とも呻きともとれる声が上がる。

「お誕生日席は違うでしょーよ……ま、ワザワザ来てくれてアリガトね」
「なぁに礼には及ばん! 親友として当然の事をしたまでだッッ!!」
「…親友、ねェ……」


その親友からのプレゼントは、あのガイ先生特製スーツだった。
暫しの攻防戦の後、ガイ先生はそれを無理矢理押し付け満足げに帰って行った。
その一部始終を見ていたテウチさんの瞳が、何故かキラキラと輝いていた。




俺と7班の子供達からは、サクラが花束、ナルトが手甲、サスケがクナイのホルスターを、それぞれ彼に渡した。
実はこの間の休みに、カカシさんに内緒でプレゼントの買出しに行ったのだ。
勿論、財布係は俺だった訳だけれど。


「こんなに沢山…何も要らなかったのに」

素っ気無く聞こえる声もそのトーンに温かいものが感じられて、本当は喜んでくれているのが分かる。
素直じゃない返答は彼なりの照れ隠しなのだ。

俺にはあんなに恥ずかしい台詞も平気で言って寄越すのに、子供達の前だとそうはいかないらしい。
案外可愛い所もあるんだと、なんだか笑えてしまう。



「そろそろ帰るぞ」

食事を終えたばかりだというのに、立ち上がったサスケの後をナルトとサクラが続く。
まだ早いと引き止めると、いつかの様にサスケが耳打ちをしてきた。


「お邪魔虫は消えてやるよ」

(おっ、お邪魔虫ッ?!)

「サスケっお前ッッ!!」


「じゃあな、カカシ」
「カカシせんせー明日は遅刻すんなよっ!」
「先生達おやすみなさーい」

それぞれが別れの挨拶を口にして、たったか歩いていってしまう。

そういえば、サスケは俺とカカシさんの関係を知っているんだった。
心得顔で帰っていく子供達の姿に目眩のする思いがした。



「俺達も帰りますかね」

真新しい手甲を付け、片手に花束とホルスターを持ったカカシさんが俺の横に並ぶ。
どうやら特製スーツはテウチさんの手に渡った様だ。


「そう…ですね」

途端に心臓がその鼓動を早める。
緊張で掌に汗がどっと滲むのが分かった。


(ここからが本番だ…イルカ、男の本懐を遂げて見せろ…っ)


バックの上から強張る指でそれをそっと撫でる。

逃げを打ちそうになる心を奮い立たせ、用意した言葉を頭の中で反芻しながら帰途に付いた。




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