愛しい君の生まれたその日
咲かせてみせよう
愛の華
□□ 男子の本懐 □□
『これからは私はたけカカシが、貴方達の大切な息子さんを幸せにします』
4ヶ月前の俺の誕生日、恋人は慰霊碑の前で俺の両親に向かって挨拶をしてくれた。
その言葉を聞いた俺は、不覚にも、泣いた。
俺を産んでくれた事に感謝をと、たったそれだけを伝える為に。
遠い任地から一時も休まず帰って来てくれたのだ。
逢えない筈の恋人に逢えた上、思いがけなく告げられた台詞。
嬉しさの余り、20代半ばも過ぎた大の大人が恥ずかしげもなくボロボロと泣いてしまった。
案の定、その直後にチャクラ切れを起こしてぶっ倒れはしたのだが、数日後復活した彼からお揃いのネックレスをプレゼントされた。
チェーンタイプのシンプルなもので、留め金の所に細かな細工が施され小さな石が埋め込まれている。
彼のものには俺の誕生石である翠玉、俺には彼の誕生石である青玉。
互いに里から支給される認識プレートを通して、何時も身に付けている。
『離れていても傍に居れる様に、なんてね』
そう言って彼はニコリと笑った。
俺の恋人はその経歴に似合わず、物凄くロマンティストだ(周りの人間に言わせるとそれは俺限定らしいが)。
聞いているこっちが恥ずかしくなる様な言葉もホイホイと平気で口にする。
それに対し俺は愛情は言葉でなく態度で示すものだと思っている性質で、こちらから好意を告げた事など片手で数えられる位しかない。
だがその想いを態度で表すという事でさえも、照れが先行して全く出来ていないのが現状だった。
本当は、彼の事が好きで堪らないのに。
任務で彼が隣に居ない日は、不安と寂しさで眠れない夜が続く事もある。
そんな時、彼のくれたネックレスは心の安定剤となってくれた。
小さな石は、彼の分身。
そして彼の元にも、俺の代わりが傍に居る。
物に縋る訳じゃないけれど、それがパワーをくれる事も事実なのだ。
だから、ずっと考えていた。
彼の誕生日に、どんな物を贈ったら良いか。
――明日は恋人の誕生日。
普段素直に愛を伝えられない俺は、この想いを届ける為にある物を用意した。
一世一代の言葉を添えて、あの人にプレゼントするのだ。
男の本気を、発揮して。
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