□□ 僕等の日常 □□


「ねーぇ、イルカせんせー」

ぴったり。
先日行った抜き打ちテストの添削に勤しんでいた俺の背中に、彼の背中が張り付いた。

「寄っかからないで下さい。重いです」

久し振りに2人で過ごす休日の昼下がり。
先程まで後ろで大人しく愛読書のページを捲っていた男は、飽きてしまったのか読んでいた本を投げ出し、背中合わせに擦り寄ってきた。

「だってぇ〜、折角のお休みなのに先生ったら仕事なんか始めるんだもん。俺つまんないよ〜」


予想した通りの返答に心の中で溜息を吐く。

この人は本当にあの泣く子も黙る『写輪眼のカカシ』なんだろうか?
思わず疑いたくなる位、彼は時折酷く子供っぽい喋り方をする。

「仕事終わらないんですもん。仕方ないでしょう?暇なら掃除でもしてて下さいよ」
「えぇ〜一人で掃除するなんてヤダ。イルカ先生と一緒がイィよ〜」

まるで幼子の様に駄々を捏ねながら体の向きを180度入れ替え、顎を肩口に乗せてきた。
多分こちらがうんと言うまでこのまま延々と話し続ける気なのだろう。

今度は音に出して溜息を吐くと、耳元で「ヒマだよ〜」とぼやいているカカシに向かって言った。

「じゃあ肩揉んでください。それなら一緒に居られるでしょう?」
「ハイッ!喜んで!!」

言うなりぱっと飛び起きると、いそいそと肩を揉み始める。
肩揉みの何がそんなに嬉しいのか知らないが、その表情は満面の笑みだ。

「んん〜イルカ先生凝ってますねぇ〜中々手強い…」

カカシはプロ顔負けの力強さで凝っている所を的確に揉み解していく。
余りの気持ち良さに思わず丸付けのペンが止まってしまう。
痛いくらいの刺激に酔いながら、熱心に肩を揉むカカシに声を掛けた。

「カカシさん…肩揉み上手いですね」
「そお? ま、キモチイイコトは全般的に得意ですけどネ」

不穏な返答に閉じかけていた目を見開いてみたが、時既に遅し。
何時の間に移動したのか、肩に置かれていた筈の左手がするりと脇腹を撫で上げた。

「ぎゃっ!何すんですかっ?!」
「んもう、ムードないんだからぁ。ね、もっとキモチヨクしてあげる。イイよね?」

こちらの抵抗など意にも介さず、長い指が上半身を這い回る。
意志に反して胸の飾りは固く尖り、首筋から耳へと舐め上げられて全身の力が抜けていった。

「だっ…ダメですって!まだ仕事が…っ!」
「だってーせんせってばスッゴイ気持ち良さそうな顔してるんだもん…もっとイイ顔見たくなっちゃった」

右手は既にイルカのズボンの前を寛げ、焦らすように形を成し始めた自身の周りをなぞっている。
このまま流されてはこの男の思うツボだと思うのに、散々快楽に慣らされてきた身体はいう事を聞いてはくれない。

「あっ、やっ…ですっ!俺は添削の続きを…っ」
「はい却下ー」

返事と共に顎を掴まれ接吻けられる。
同時に入り込んできたカカシの舌が器用に歯の裏側を突き、じわりと湧き上がる快感にこんな所まで性感帯なのかと驚いた。


――もうダメだ。
観念するしかない。
だって自分もカカシに触れたかったのだから。


ここ数日はお互い任務や雑務が重なって、2人で過ごす時間などロクに取る事が出来ないでいた。
結局仕事の終えられなかった自分は家にまで持ち帰る羽目になり、久し振りに訪れた休日の半分をムダに過ごしてしまったのだ。

カカシと触れ合いたいと思ってはいても、目の前の答案を見れば己の処理能力の遅さを恨みながら添削作業を続けるしかなかった。

「はっ…カカシ…さん」

まだ日も高い内からなんて破廉恥な、と理性は訴えるけれどカカシに蕩かされた頭は本能を選ぶ。
先程から際どい場所をなぞるだけで本質的な刺激を与えてはくれない右手がもどかしかった。

「ん、どうして欲しいの?」

聞く者全てを虜にしそうな甘い声で、優しく囁く。


――分かっているクセに。

普段は優し過ぎる程優しい人なのに、こういう時だけは物凄くイジワルだ。
初めの頃は恥ずかしくて言えなかったお強請りの言葉。
けれど、ちゃんと言わなきゃこの人は本当に触ってくれないんだ。

「さ、触って……」
「ドコを?」

ソコまで言わせるのか?!と羞恥で顔が熱くなる。
昼下がりには凡そ不釣合いなその単語を口には出来なくて、カカシの右手に己の手を添えて導いた。

「ココ…」
「ふふっ。ま、コレで勘弁してあげマショ」

ちゅっと頬に接吻け、穿いたままだったズボンを下着ごとずり下げられる。
飛び出してきた雄は既に固く勃ち上がり、先端からはぽろぽろと蜜を零していた。

「まだ触ってもいないのに…ほんと、イルカせんせは敏感だよね」

ゆるりと根元から先端へと扱き上げられ、待ち焦がれた快感に思わず声が漏れる。

「ぁっ…」

しゅ、しゅ、とリズミカルに上下する音に伝い落ちた蜜の濡れた音が混じり耳を犯す。
親指の腹で先端を押すように擦り付けると、粘液がくちゅりと糸を引いた。

「聞こえる…?ほら、こんなに濡れてる」
「や…っ!言わな…でっ!」

恥ずかしさに嫌々と顔を左右に振る。
未だ結んだままの髪がカカシの顔にあたって、ぱしぱしと音が鳴った。

「髪、解くよ?」
カカシが耳元で囁くだけで全身にゾクリと震えが走る。
口で器用に髪紐を引っぱると、黒髪がぱさりと広がった。

「イルカ先生、マジ色っぽい。堪んないよ…」

うっとりした声で呟き、熱く猛ったカカシ自身を背後から布越しに押し付けてくる。
こんなゴツくて野暮ったい男相手に色っぽいだなんて絶対にどうかしていると思うけれど、自分の姿に興奮してくれているのが分かって嬉しかった。


「はぁっ…カカシ、さん…っ」

カカシのシャツを引っ張り、寝室へと視線を向けた。
心得たとばかりに朱く染まる頬にキスをくれると、イルカを抱き上げて隣の寝室へと向かった。




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