お月さまシリーズ

□お月さまシリーズ
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仕事は沢山あった。
でも“花魁”のように“己”を売る仕事は拒んだ。
そうしたら幾度も殴られた。

それでも私はその仕事だけは嫌だった。

危険な“用心棒”と“雑用”を押し付けられてしまったけど。
断ることが出来ない私はボロ雑巾になるまで一日を働かされて。

それでも青空に憧れて。


 


「そろそろ伸びてきたねぇ…」
「さて髪を出してもらおうか?」

女と男が笑った。
その笑みに少女は震えたが、そんなことなど二人は気にしない。
気にする価値もないのだ、二人にとってその少女は。

「…はい」

少女は冷たい床に正座して顔を俯かせる。
長く綺麗な銀髪がサラ…と落ちて。
主が出した髪切り鋏の前に丁度良い高さとなった。

す…ザッ、ザッ…。

出来るだけ長く。
出来るだけ多く。
そうすれば高い値がつく。

だから容赦なく切る。
短く、短く、短くなっても気には留めない。

「…ッ」

自分の髪を元に引っ張られて、
痛みで顔を歪めた少女。

『痛、い…』

それだけではない。
虚しい。
何で自分の髪をこんな風に扱われないといけないのだろうか。

そう思いしも、少女はただ我慢した。



「結構取れたわね…」
「本当だな」

髪を切られて、少女は「まだ居たの?」という声に追い出された。
部屋を持たせてくれないので、再び廊下に戻っていく少女の姿は誰もが気にも留めなかった。

女と男が持っている少女の銀髪は高く売れる。

暗闇に溶けずに青白い神秘的な光を放つ綺麗な銀髪。
だからこそ天人は勿論、人間にだって評価高い。
勿論、色々と非道なことをして権力的に伸し上った者たちの、だが。


だが数ヵ月後、その売られた髪を目に留めた一人の女によって。



少女の運命は大きく“あるべき道”に戻される。

     
  

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