銀翼と赤の軌跡

□Episode.01
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序章

 かつて、世界の年号が西暦と呼ばれていた時代。
人類の文明は繁栄の極致(きょくち)にあったという。

 長いあいだ非科学的だといわれていた『魔法』の解明に成功し、科学と融合した『新科学』が全てを支えていた。

 制御された天候と、人の代わりに働く機械。核は地上から姿を消し、戦争という非文明的な行動も無くなった。
 それは人々の理想とした世界だった。


 けれど、世界を覆った閃光で全てが崩壊することになる。
 後に『審判の日』と呼ばれる白の一夜は、一瞬で多くの命と文明の明かりを全て奪っていった。

 新科学の主だったものは意味のないものとなり、魔法だけがかろうじて残った。
 天候は狂い、荒涼とした大地が広がった。そして突如現れるようになった、異形。

 どこから来たのかもわからない『それら』は、総じて人を襲った。新科学を失った人類に、異形を倒す術などあるはずもない。
 世界の支配者は人類ではなく、異形となった。



 西暦は旧時代となり、人々は審判の日を境に年号を変えた。

『白暦(はくれき)』。

 それが、この死に満ちた世界の呼び名となった。

 栄華を誇った人類の文明は、終わりを告げたのだ。





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