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□出会いの日は暗くて明るい道
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何が。何が、起こったか分からない。
とりあえず、今僕が解るのは。
今、僕が路地裏で腰を抜かしていること。
酷く左頬が腫れて痛いこと。
そして、
どきどきしながら参加する筈だった入学式には、もう確実に間に合わないこと。
[出会いの日は暗くて明るい道]
どかっ。
どか。
ぼこ。
ばきっ。
ねちゃっ、ぐしゃっ。
どかっ。
目の前で繰り広げられる光景は、小学校で見てきたどんな怪我や血より酷い物だった。
同い年くらいの少年が、自分の背丈より頭一つ分大きい高校生だか大学生3人をボコボコに殴り倒しているのだ。
どうしてこんな事に巻き込まれているんだろう。
今日は、中学校の入学式で、小学校の頃体が弱くて余り友達の出来なかった僕は、中学生になって何か環境が変わるだろうかと期待しながら浮き足立って早めに家を出た。
(本当は入学前に寮に入らないと駄目なんだそうだけど、僕の家は母親が酷く心配症で、万が一の事があったらいけないから1週間は家から通わせると言って学院長に許可を取ったらしい。)
学校は、街から少し上がった山の開けた所にあるらしいので、近道をしようと思って路地裏を通ったんだ。
それが、間違いだった。
「邪魔だァァア!!!」
ばきっ
突然目の前に星が飛んで僕は右側に吹っ飛んだ。
何が起こったのか全く分からなかったが、段々と熱くなっていく左頬の感覚に、左から殴られた事だけは解った。
尻もちをついて地面に倒れ込めば、くらくらとする視界で上を見上げる。
さっきまで居なかったハズの誰かが自分を背にして…立っているのが解った。
その誰かはあっと言う間に僕を殴って来た人と、その隣に居た仲間っぽい人を倒してしまったのだ。
まるで、昔見たテレビのヒーローみたいに。