NOVEL
□綺麗な手(ヒソイル)
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この両手にこびりついた血が、綺麗になれば自由になれるかなって思ったことがある。
そんなわけないのに……
いつもの通りに仕事を終えたイルミは、帰宅するにはまだ時間が速いと、仕事で訪れた街をぶらぶらとあてもなく歩いていた。
本気で走ったら一瞬で通り過ぎてしまいそうな小さいこの街で、なんとなしに、自分と同じ匂いのする人間がいることと、血の匂いを感じとった。
正確に何処にいるかまではわからないけど、この先の通を歩いていったら会える気がすると思ったイルミは、ゆっくりとした足どりで気配のする方へ進んでいく。
街を抜けて少し行くと、元は人間だったであろう肉の塊と、その肉の塊の一部を手にしたまま、クククッと笑っている男の姿があった。
「やあ☆」
「……ヒソカ何してんの。」
気配を消さずに近づいてきたイルミの存在には、だいぶ前から気付いていたはずなのに、今気がついたかのような顔をして、声をかけている。
「きみに会いに来たんだよ♪」
「ふーん、で、何か用?」
嬉しそうなヒソカとは対象的に、無表情で返すイルミ。
肉の塊を掴んだまま、つれないなぁ☆と言いながら、両手を広げてイルミの側に来たヒソカ。
「まさかとは思うけど、触らないでよ。」
自分に接触するまで止まらなそうなヒソカの気配に、待ったをかける。
「あ、ごめんごめん☆」
ぽいっと掴んでいた肉の塊を捨てて、これで大丈夫といった感じのヒソカが、また両手を広げ、イルミを抱きしめそうな距離まで近づいてきた。
「ヒソカ、さっきと何が変わったの。」
その言葉に、またストップをかけられたヒソカは、自分の顔の前に両手をもってきて、また「あ、ごめんごめん☆」と全く悪いと思っていないような態度をとる。
「ちょっと待っててね◇」
そう言い残してヒソカは街の方に走っていった。