中編

□Bitter Bitter
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塗りたくられる液体のような感触は、先程自分が吐いた白濁か。丁寧に擦り込むような動きは、これからの行為に備えているのだろう。
後ろを弄る間であっても肉茎への愛撫を止めない。逃げ腰になるものの、逃げたくてもその両腕からは逃げられない。

「ベルっ……!!ベルゼーヴァ、やぁ、……そんな、触らないで……!!」
「何かを頼むのなら、もう少し可愛らしくねだったらどうだ……?」
「そ、んな、馬鹿――――っうぁぁ!」

白濁を潤滑油代わりに、骨張った指が侵入してくる。痛みのないよう、ゆっくりと。
滑りをよくする為か、内側にも白濁を塗られる。指が出し入れされる度に粘ついた音がして、それがまたマフェイドルの羞恥を煽る。

「や、変っ……!やだよ、こんな……」
「好きなだけ喘いでいろ。泣いても構わない、今は二人きりだ」
「そういう問題じゃ、――――ひぁっ!?」

ベルゼーヴァの指が深くに進む時。
指が擦り上げた一箇所で、マフェイドルの声が明らかな嬌声をあげた。先程とは違う場所での、鳥肌が立つ程の感覚。
マフェイドルの様子を見ていたベルゼーヴァが僅かに笑みを浮かべる。

「な、……に、いまの……」
「良い眺めだな。男であろうが、君が陥落する姿というのは」
「陥落っ、て……!ふ、うわっ、や、嫌だっ……!あ、ぁあ、っ―――!!」

反射的に出たのは拒否の言葉。拒絶でないのは声の色が明確に表している。
赤く上気する肌、羞恥に染まる顔、受け入れたいのに逃げたいという矛盾。
二度目の絶頂は直ぐに来た。ベルゼーヴァの手つきはあくまで優しく、二回めの放出さえその掌で受け止める。

「っ、は、……は、ぅ、はぁ……」

絶頂を知らせる声は甘く、男のものでも甲高い。息を整える為の呼吸でさえ、蕩けるような声が混じっていた。
ぐったりとしたマフェイドルの手枷になっているタイが外される。自由になった腕だが、マフェイドルは身じろぎ一つしない。
平たい胸部が上下する、小さな動きだけが呼吸を示している。

「……早い男は嫌われるぞ?」

からかうような口調には

「っ……誰のせいだ、馬鹿……!!」

ゆっくりと身を少しだけ起こし、ベルゼーヴァを睨みつける。強がるような表情を見せたマフェイドルに笑みを向けた。
その笑みがまたカチンと来たようだ、マフェイドルの表情が怒りを象る。

「無いだろ普通、同性なんだぞっ……!!慣れてるんじゃないだろうな!?」
「人聞きの悪い……。人の体など男女の違いさえ除くなら、背格好は違えど構造としては大体は同じだ。医学も知らない訳ではないからな、ただ実践となると今日が初めてだ」
「実践、……私は実験動物か何かかい?」
「実験動物?心外だな、君以外に試す訳がないだろう」

マフェイドルの額に冷や汗が伝う。
逃げようとしても、腰が抜けたようで立てない。手枷にしていたタイで手を拭いたらしいベルゼーヴァの手が、無防備なマフェイドルの腰に位置付いた。

「や、ベルゼーヴァ、待て!それは待って!!」
「待たない」
「っ……、この、待てって」

ベルゼーヴァが油断した一瞬の隙をついた。
ベルゼーヴァの胸倉を掴み、思い切り引っ張る。

「っ、!?」
「言ってるだろこの玉葱!!」

思ったより抵抗は無かった。油断してたから当たり前か。ベルゼーヴァはマフェイドルのすぐ隣に寝転ぶことになり、その体にマフェイドルがのしかかる。
既に緩められた下肢の衣類から顔を出して屹立しているベルゼーヴァのそれに視線を向けると、マフェイドルが邪悪ささえ窺わせる笑みを浮かべた。

「マフェイドル、君はっ……!」
「油断してる方が悪いんだよ。大人しくされるがまま、なんて絶対嫌だ」

ベルゼーヴァの肉茎に指を這わせる。既に硬度も充分なそれは大きく、この形そのままを受け入れる事になるのかと思えばマフェイドルの背筋に冷たいものが走った。

「……女の体じゃないんだよ、二回もあんなもの凄い痛みを味わえって言うの?」
「………だから、出来得る限り丁重に扱おうとしたんだ」
「ちょっと待ってて」

マフェイドルの体がベルゼーヴァの下肢を覆う。閉じた長い脚に体をつけて、顔を屹立に近付ける。
そろそろと指を這わせると、その形が反応するように震えていた。

「マフェイドル、何を」
「……決まってるじゃないか」

言い終えた直後、その屹立を口に咥えた。

「っ、……マフェイドル!!」

雄くさい匂いがした。汗とも違う液体がマフェイドルの口腔内に流れ出す。
深くまで咥えこみ、舌を使って扱きあげる。唾液と液体が混ざり、卑猥な音を立てるがマフェイドルは必死だった。
行為を期待していたのはお互いに、だ。ならば一方的に悦い目を見るのは嫌だ。

「………ちがうだろ、ベルゼーヴァ」

屹立から口を離したマフェイドル。

「『フェル』。……貴方が決めた呼び名だろ?」

それだけ言ってまた行為を再開する。ベルゼーヴァの、耐えるような吐息が心地好かった。
ベルゼーヴァの何もかもが愛しい。こんな真似、ベルゼーヴァにでないと出来ない。

「………フェル、……っ、もう、いい……」

声に吐息が混ざり、艶を増していく。その艶が意味する所を知っていた。
耳に心地好い声がする。聞こえていて、マフェイドルは無視した。

「フェル、止せ……!それ、以上……、っ!」
「………。」
「く、――――!!」

放出の瞬間も、忘れていなかった。
咥える位置を少し変えて、白濁を全て口腔内で受け止める。絡み付く白濁を含んだまま、その屹立を口から離した。
酷い味と匂い。こんなもの、最愛の人のものでないと誰が口にするか。
ベルゼーヴァのスラックスを力任せに引き下げた。そのまま顔を屹立側まで下ろしていく。
唾液と混ざった白濁を、ベルゼーヴァの袋に舌で塗った。滴るそれを、放出の余韻が残るベルゼーヴァを無視して。

「……フェル、……一体」
「私はあんまり上手くないけどさ」

垂れる白濁を指で掬い取る。指に充分に絡め、指が次に向かうのは

「っ、!?」

ベルゼーヴァが目を剥いた。それもその筈、位置は搾まり。
あからさまな拒絶の色を出したベルゼーヴァが両手を伸ばすが、その二本をお返しとばかりに自由な片手で抑える。

「私ばかり啼くなんて不公平じゃないか。私が女のハジメテをあげたんだ。ベルゼーヴァのハジメテ、私が貰うな」

力なら、今は負けない。拒絶を振り切った一瞬を狙い指を一本突き入れる。

「っ、ぐ……!!」

まさか立場が逆転するなんて思わなかったのだろう、ベルゼーヴァが呻いた。
痛いのかも知れない。そういえばベルゼーヴァは指とはいえ、入口にも念入りに準備を施していた。
指を一度抜き、もう一回白濁を指に纏わせる。二度目は上手く飲み込ませる事が出来た。
 
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