中編

□2.変わらないふたり
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「秀利君、彼女出来た?」

神社から道に続く階段を下りながら、まだ下を行く彼女が笑ってそう言った。
息は白く、彼女の笑顔がその吐息の向こうで少し霞んで見える。言われた問い掛けは、今や少し憎らしく思えて。

「……いいや」

『約束』を叶えさせてくれず、未だにこの想いを縛り付けているのは誰なんだと問い掛けたかった。
しかし自分には、彼女の帰還に抱擁で返す事も出来ない。未だ大切な事も言えない二人にはお似合いのようにも思えた。

「……ぁ、…そ、そうなんだ」

こちらの返答を意外と思ったのか、返った返事は更に意外なもの。
当たり前だ、まだ三年しか経っていない。そんな簡単に癒えるような傷ではなかった。

「大学に入ってからも、特に不便だと思った事も無い」
「………。」
「……正直、興味も湧かない」
「秀利君らしいね」


癒える訳がない。
だって、君はあの日、――――


「ねぇ秀利君、いきたい場所があるんだけど……良いかな?」
「君が『日付が変わるまで』と言ったんだろう、……僕は構わない」
「やった!」

意図的に思い出さないようにしていた『あの日』が蘇る。
本当に、目の前の彼女は何も変わっていなかった。







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