Fgo

□厄除け
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立香から呼符を貰ったその足で、うきうきと英霊を召喚しに行く。
クー・フーリンに会ってしまえばまた色々小言を言われかねない。魔力供給もまともに出来ねぇのに、とか、俺だけでも扱いきれねぇのに、とか。
本当にそうだと思う。けれど、それとこれとは別だ。
一対一のサーヴァントとマスターの関係だから付きっきりになれるだけで、サーヴァントが増えたらそっちに手を回さなければならなくなる。そうすると、自然と接触は減るはずだ。
サーヴァントに無駄な懸想をしている自分が嫌なのだ。無理矢理にでも、離れる時間が欲しかった。

「これでキャスタークラスでも来てくれたら万々歳なんだけどねー」
「俺がなんだって?」
「………」

廊下を曲がった先に居たのは、今最も遭いたくない人物だった。

「………クー・フーリン」
「おう」
「………なんでここに」
「呼符貰ったな?」

ドンピシャを言い当てられて思わず半歩後ずさった。無表情に近い不機嫌顔が近寄る。

「召喚すんのか」

大きな手が、肩に延びてくる。赤い瞳が伏せがちになっている顔も美形だなぁと思いながらも、問いには答えようと思考を巡らせた。

「………これも業務の一環だから」
「そうか」

延びてきた手がすぐに引っ込められる。あれ、今日はそれで終わる?そう思った時だった。

「俺も付いてくぞ」
「えっ」
「そのくらいいいだろ」

不機嫌そうな表情は変わらず、言葉少なに二人で廊下を進む。

いざ、召喚。
呼符を一枚使用、そして召喚されたのは―――――

「………礼………装っ……!!」

しかももう持ってた。悔しさにその場で塞ぎ込む。

「っはっはー、ツイてねぇな」
「………うっさい」

これで何枚目だろう。何回期待して、何回がっかりして、何回この男と離れたいと思えばいいんだろう。
誰でもいいから、いや違う。『この男と離れさせてくれるなら』誰でもいい。

「ほら、そんな所で寝るなよ。行くぜ」
「………」
「……今日は優しくシてやるからよ」

ひょい、と担がれて、何をしなくてもその場を離れていく。ああ、こんなことあと何回繰り返さなければいけない。
その時はそんな考えで一杯で、クー・フーリンの口許が歪んだ弧を描いているのに気付かなかった。
手を置かれた肩に、イサのルーン文字が刻まれていた事にも。

イサの意味は『安定』『冬眠』『停止』、そして『計画の停滞』。
二人きりを望んでいるのは、誰よりも―――。




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