嘘吐遊戯

□冬の日、
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同日
PM5:45


「しっかしアンタ、本当に空気読めないわね!」
「っとによぉ!なんで直ちゃん達も呼んだんだよ!」
「しょーがないじゃん、メール送っちゃったんだから…」
「直も遠慮しないで断っちゃえば良かったのに」
「いえっ、全然そんな!」

このクリスマスパーティーを企画したのは、福永さん。

その福永さんは今、マイさんやユキナさん、江藤さん達からボコボコに言われていた。

「わかってんの?クリスマスなのよ、クリスマス!」
「うるさい!謝ってんじゃん!」

私、と秋山さんを呼んだ福永さんをみんなが叱るその根拠は、


"クリスマスはほぼ、恋人のためのイベントだから"。


「あの、本当にいいですから、皆さん!秋山さんとは昨日、イルミネーション見に行きましたから」
「昨日って……平日じゃない!」
「あー…無理したんだ、秋山」
「それもこれも………」

ぎろっ

「………申し訳ない!」

しまいには、福永さんが土下座までする有り様に発展した。

「いやあの本当に!福永さん、頭あげてください!」
「……さっきから気になってたんだけどさぁ?」

横から、西田さんが言葉をかけてきた。

「その、首から下げてる指輪は?」
「あぁ、これですか?これは…」


今朝のコインロッカーでの出来事を説明した。


「……でも、どうしようって思って、それで…」
「そんなの、左手薬指にはめときゃいいのよぉ!」
「ほら外す!」
「ちょっ、あの、でも、プロポーズとか…」
「そんなのいいのよ、ほら!」



「…なにしてるお前ら」



「「「「「「――!」」」」」」

突然登場した秋山さんに、その場の全員が固まった。

「呼び鈴鳴らしてんだから、誰か出ろよ」
「あぁゴメン!ちょっとたてこんでた!」
「それは聞こえた。何騒いでんだ」
「いや!なんでもない!」

福永さんと江藤さんが応対する。

「ほら!今のうちに!」
「あ、ちょっ…」
「よし、おっけ!」

その後ろで、私はユキナさんたちに、ばっちり左手薬指に指輪をはめさせられていた。

「っし!じゃぁパーティー始めっかぁ!」




そのパーティーの間、秋山さんは指輪には全く触れなかった。

私はむしろ安心したけれど、他に集まった人たちはだいぶしょげていた。






同日
PM9:26


「……それ、アイツらにはめさせられたんだろ」
「えっ?いや、あの……はい」

ようやく触れてくれたのは、帰り道でのことだった。

「やっぱりな。指にはめてくるわけないと思ったよ」
「だって、秋山さんズルいんですもん……!」
「何が?」
「そんな、突然…指輪なんて、びっ「…直」くりし…はい?」

言葉をさえぎられた。

「手、出して」
「あ、はい」

左手を差し出すと、秋山さんは指輪を外した。
そして、指輪を握らせられた。

「あの……?」
「………直」
「はい」


「すきな指に、はめて」


「……あ、の…」

朝と同じ文章を突きつけられて、思考は止まった。

「…また固まってる」
「いや………だって、どうして……秋山さんが、はめればいいじゃないですか」



「…押しつけたくないんだ」



「…………え?」
「お前の意志で、はめてほしい」
「…あきやまさん……」

だから、あんな……。

「………秋山さん」
「ん?」
「…私、左手の薬指がいいです」
「なら「だから、」

私は、秋山さんの右手を取って、指輪を握らせた。


「だから、秋山さんがはめてください」


「………………」
「お願いします、秋山さん」
「…………ったく」

はぁ…と、大きなため息をつかれた。
そして左手で、私の左手をとる。

「………狡いな」
「お互い様です。…ぁ」

左手の甲に、ふわっと白いものが降りた。

「雪……か」
「ホワイトクリスマスですね…」

………………。

「………直」
「なんですか?」
「…キス、してもいい?」
「普通訊きます――っ」




Wintry day, White kiss.
 
サンタクロースって、いるんだ
素敵な贈り物を運んでくれるの





「秋山さん、来年はサンタさんのカッコしてくだ「ふざけんな馬鹿」





******
どうですかこんなプロポーズ。らしくないですよね!(笑死
いわゆる「恋愛偏差値零」ってやつです(私が

2010.12.25.up

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