嘘吐遊戯

□冬の日、
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12月24日 金曜日
PM5:30


両脇のイルミネーションが鮮やかなショッピングモール。

スピーカーから流れてくる曲は、クリスマスソングばかり。


たくさんの恋人達の待ち合わせ場所になっているそこに、私もまた急ぐひとりだった。


「…あ、秋山さーん!」
「……遅い」
「ごめんなさい、電車が止まっちゃって…」

大きなクリスマスツリー。

30分近く遅れたけれど、秋山さんは待っていてくれた。

「もう、普段は全然こんなことないのに…こういう時に限ってですよねー」
「世の中そんなもんだ。…で?」
「はい?」
「今日はどこに連れまわされるんだ、オレは」
「あ、えーっと…あのお店がずっと気になってたんです」

私が指差したのは、ファンシーショップ。

「………まぁ、いいけど」





同日
PM7:58


買い物も食事も終えて、私と秋山さんはまたツリーの前に来ていた。

「あと2分でライトアップです!」
「こんな明るい中でライトアップしても、意味がない気がするんだが」
「あー…そうですね」

両脇に立ち並ぶたくさんのショップは、まだ閉店前。モールの中は昼のように明るかった。

「確かに、感動は半減かも……」
「半減で済めばいいけどな」
そんな会話をしていると、クリスマスソングばかりだった放送に、人の声が入ってきた。



"それでは、ライトアップまで…10、9……5、4、3"


ぱぱぱっ

「わ!」
「…ふぅん………」

さっきまで点いていた照明という照明がすべて消えて、あたりは真っ暗になった。


"2、1、ゼロ!!"



パッ



「………うわぁ……」
「……………」

真っ暗な中に、電飾と下からのライトアップで浮かび上がるツリーは、言葉を失うほどだった。

「す、スゴいですね秋山さん―」
「…そうだな」

……………。

「…ごめんなさい、お仕事忙しいのに」
「別に」
「どうしても見たかったんです、このツリー」
「…………」
「……………」

じーっと見上げると、はぁ、と秋山さんはため息をついた。

「……わかった、訊けばいいんだろ。なんでこのツリーに拘る」
「このツリーを一緒に見ると、その人といつまでも幸せに過ごせるんですって!」
「ジンクス、ってやつか」
「…夢の無い言い方しますね……」
「まさかサンタクロースは信じてないだろうな」
「サンタさんは卒業しました。10年前に」
「……今、いくつだっけお前」
「21です」
「…………ぷっ」
「あ!笑いましたね!?」
「だって11って、小5だろ…」
「お父さんが巧妙にプレゼントを枕元に置くんですもん!」

「…幸せに育ったんだな」

「……何か言いました?」
「いや」
「?…また来年、一緒に見ましょうね」
「……………」
「……………」

秋山さんは、なんにも言わなかったけれど、


強く、手を握ってくれた。


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