嘘吐遊戯
□chocolate cake
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誕生日。
ここ数年、素通りしてきたイベントだ。
素通りどころか、酷いと忘れることさえある。
例えば、馬鹿な奴らに歳で先を越されて自慢される。
いくら成績が良くても、背が高くても、歳の差だけはどうしようもない。
ガキの頃はそれにイラついたりしたが、そんな感覚はとっくに無い。
最近はそもそも、祝ってくれる人が誰もいなかった。
ますますどうでもよくなる。
18も29も30も41も変わらない。
起きて、食べて、働いて、寝る。
ただそれだけの日々が続く。
誕生日も、単にそのうちの1日。
だった。
「秋山さん、お誕生日おめでとうございます!」
「…うん」
夜に突然訪ねてきた直は、開口一番こう言った。
今、目の前には、直が作ったというワンホールまるごとのケーキ。
「誕生日の話なんかしたか」
「いえ、葛城さんから」
「訊きだしたのか」
「まぁ…いけませんでした?」
「いけなくはないが……」
めんどくさい。
なんて、笑顔の直に言えるはずも無かった。
だいたい、葛城に誕生日を教えた記憶だって無い。どういうからくりだ。
いつもどおり、なんでもない日になると思っていたんだが…。
「ケーキ、切り分けますね」
「…………」
半分、1/4…と、綺麗に等分されていく。
「……なぁ」
「はい?」
「今日、平日なんだが」
「金曜日ですね」
「そんなもん作ってる暇があったら勉強しろ。学生だろうが」
「ダメですよ!今日は、特別な日なんですから」
…本気で怒ったなこれは。
「誕生日は大切にしなくちゃ、ダメです」
「大切もなにも、別に何が変わるわけじゃ…」
「お礼はいつも言えますけど、お祝いはめったに言えませんから」
「…ん?」
「"おめでとう"は、"ありがとう"に負けないくらい幸せな気分を運んでくれるじゃないですか」
「…………」
「誕生日は、遠慮なくお祝いが言える日ですから」
「……………」
「さっ、ケーキどうぞ!」
差し出されたそれは、そういえばいつも作ってくる、白とは違う色だった。
「今日のは、本当の意味でトクベツなんですよ」
「……………」
誕生日。
ここ数年、素通りしてきたイベントだった。
今年も、正直忘れかけていた。
祝う人も、理由も、何も無かったが…今年からそれら全てが、オレにはできたらしい。
何年ぶりかに誕生日ケーキという代物を目にし、
おめでとうと言われ、
嬉しくない。
そんな嘘…ましてや直には、つけなかった。
「…ありがたく頂くよ」
君からの祝福なら来年も
またこのケーキを食べたい、
とか願っても笑われないよね?
(いい歳して、ガキだな。…お前もオレも)
******
誕生日ってわりと平日ですよね。え、私だけですか?
そして松田翔太さん、25回目の誕生日おめでとうございます。より一層のご活躍、期待しています。
でもソフ○バンクには乗り換えないよ!(笑
2010.09.10.up