嘘吐遊戯

□アキヤマシンイチ
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ケータイが鳴って、彼女は言葉を切った。

「…出ていいわよ」
「はい、すいません……あ」

背面ディスプレイを見て、はっとした表情になった。


ぴっ


「もしもし………今は…はい、そうです。なんで………あぁ、なるほど。
…え、あと…わかんないです。…えー大丈夫ですよ。……はぁ、わかりました。それじゃあ…はい」


ぴっ


「………誰?」
「秋山さんでした」
「…そう。なんて?」
「ここに来るそうです」
「え!?どうして?」
「わかんないんですよ。"今行くから待ってろ"って…」
「今って…」
「もう来てるみたいなんです、大学には」

本人も戸惑っている様子。
…え、なんかドキドキしてきた。

「それで…何を言いかけたの?」
「あぁ………あの」
「うん」
「昔から…知り合いだったんじゃないんですよね」
「えぇ、まぁ」
「じゃぁ……えっと」

眉間にしわがよった。

「…やんわり言おうとしてる?遠慮しなくていいよ」
「あの…じゃぁ」

決意したように、彼女は口を開いた。



「あなたは、秋山さんの何を知ってるんですか?」



「………え…っと…」

思わぬ反撃だった。
見くびっていた、としか言いようが無かった。

「秋山さんは、優しい人なんです」
「優しい……」
「私を何度も助けてくれて、かばってくれて、勇気をくれて、それから」
「………それ、から?」
「……みんなを、幸せにしてくれました」
「しあわせ…」
「さっきはああ言いましたけど、私にとっては十分ヒーローなんですよ」

そう言って、彼女は笑った。


わかったことがある。

アキヤマシンイチ、なんか…



「……最初から、そんな人いなかったんだ…」



コンコンコン


"入りますよ"

かちゃ

「……教授」
「秋山さん!」

ふたりは一緒に入ってきた。

「お久しぶりです、秋山さん」
「目は覚めたか?」
「……はい。すみませんでした」
「謝らなくていい」

彼は笑わなかった。
でも、笑って見えた。

「帰るぞ、直」
「え…でも」

私に、どうしましょう?という視線を送ってくる。

「今日はありがとう」
「あっ、こちらこそ」

ぺこっ と頭を下げて、教授にも礼を言った。
秋山さんはそんな彼女を、後ろから見ていた。

「……………」

…なんだ……。

やっぱり私は、幻を追っていたんだ…。

「それじゃあ、また会いましょうね!」
「えぇ、機会があったら」





真っ直ぐなを持つ人
 
嘘つきを嘘つきでなくすほど
強いそれの原動力もまた嘘つき





(……頑張ろう。"あの人"に負けないように)






******
やっぱりな「カンザキナオ」の"後日"談。
いや意味分からないですね!すいません!

2010.08.27.up

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