嘘吐遊戯

□アキヤマシンイチ
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「初めまして、神崎直です!」

「こちらこそ、神崎奈緒です」

同じ名前を名乗る奇妙な光景。
場所は、2週間前に"あの人"と会った場所と同じ。


この前と違うのは、私と彼女の目線が同じってこと。


「えっと……なんで私、呼ばれたんですか?」
「あら、秋山くんから何も聞いていませんか?」
「私と同じ名前のヤツに会ったんだ、なかなか面白かったぞ」
「…それだけですか」
「はい、残念ながら」
「彼らしいですね」

ふぅ、と教授はため息をついた。
私に会った感想、そんな一言だったの!?

「……落ち込むことありませんよ、神崎さん」
「はい………」
「あの…で結局、私は?」
「彼女の質問に答えてあげてください、直さん」

教授は見事に呼び分けた。

「難しい事とか、わからないですけど…」
「大丈夫ですよ。思ったことをそのまま、言えばいいんです」
「はぁ………」
「それでは、私は席を外しますね。別の約束があるので」

ごゆっくり、とそう言い残して教授は、B4の茶封筒を持って部屋を出て行ってしまった。


………………。


「あの、おいくつですか?」

口を開いたのは、彼女だった。

「22です」
「あ、じゃぁ年上なんですね…でもスゴいですね、帝都大で心理学専攻なんて」
「え?」
「葛城さんも、秋山さんも、間近で見ましたから……」
「間近……で」


…………………。


「あの…」
「はいっ」
「……何が、あったんですか?」
「何が…って?」
「………彼は、私が憧れていた彼じゃ、なかった」
「彼………」
「私、彼に憧れて、この大学に入って、心理学を専攻して…」

"ヒーローなんかじゃない"

「…テレビや新聞で見た彼は…もっとカッコよかった。なんていうか…輝いてた、気がするの」
「………それ、秋山さんに言ったんですか?」
「…ちらっと、は」
「あー…、怒りませんでした?」
「えっ………」

な、んで………。

「……オレのファンなんかは、辞めろって…」
「やっぱり」

そう言って、彼女はからりと笑った。

「………どうしてあなた、わかるの?」
「いえ…なんとなく、秋山さんなら怒りそうだなって」
「……………あなた…」

なんにも考えてなさそうな顔。
こんなコが彼に影響してるの?

「……あなた、何をしたの」
「はい?」
「彼に何をしたの」

低い声が、出た。

「…何も、してません」
「嘘。彼、私の名前を聞いて、少しだけど硬直してた。あなたが今の彼にとって重要ってこと」
「そんなこと言われても…」

彼女は、困ったように俯き、そして呟いた。


「私はただ…秋山さんを、信じただけなんです」


「あなた…彼の被害者なの?」
「違います!!…私は、秋山さんに助けてもらったんです」
「……話が見えないわ」
「私は、秋山さんを信じて……秋山さんは、私を信じてくれた。それだけ、なんです」
「あなたを…信じた?」

なんなの?
どんな繋がりがあるっていうの?

「あなたは……あっ」


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