嘘吐遊戯

□休日の過ごし方
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「……はい。それでは」

ピッ

はぁ と、通話を終えた秋山の口からため息が漏れた。
(仕事、か……明日は日曜日だってのに)
明日は日曜日、という以上に彼に重くのしかかっていたのは、
直と会う約束があったこと。

(電話……いや、メールにするか…)
彼は、予想される直の反応を直(じか)に聞きたくなかった。

『明日仕事入ったから、そっち行けなくなった。悪い』

そっけない文章だけを送った。
すると、すぐに返事が来た。


『わかりました、お仕事頑張ってくださいね!』


元気そうな文面を見て、秋山はまたため息をついた。



……………



「……おい、直?」

コンコンコン

と、ドアをたたきながら、秋山は声をかけた。

予想より早く仕事を終えた秋山は、なによりもまず、直に電話をした。
だが、直は出ない。
メールもしたが、帰ってこない。


そして今、中から返事は無い。


出かけたんだろう。

そう思いながらも、少しの不安に駆られて、秋山はドアノブに手をかけた。
すると、

「……開いてる…」

(まさか、鍵もかけずに出かけるほどバカじゃないだろ…)
「…おい、入るぞ」
それでもいまだに、返事は無かった。




部屋に入って辺りを見回すと、ソファーでうつぶせになっている直を見つけた。それが、寝ているだけだとわかった瞬間、
「…………はぁ…」
秋山は、安堵の混ざった大きなため息をついた。
「心配して損した……」


……………。


(……寝顔、か)
秋山はしゃがんで、直の顔をまっすぐ見ていた。
「…平和そうな顔しやがって」
彼はそうつぶやいたが、実際、彼らの生活は平和だった。

自分は仕事に就いて、直は女子大生らしい生活を送っている。


そして、特別な用も無く、ふたりは会える。


「……あきやま、さん」
「…!」
物思いに沈んでいた秋山は、はっ と我に返った。が、
「………寝言か…」
秋山は、ふぅ と短いため息をついて立ち上がった。

(とりあえず謝って……いや、それよりもまず…しかるか)

「………あきやま…さん…」
「なんだよ」
「……えっ?!」




新しい生活は光に満ちて
 
アタリマエが変わる瞬間
それを君にもたらした





******
ため息をついても幸せは逃げない、がコンセプト。

〜2010.07.28.までの拍手お礼
秋山サイド

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