嘘吐遊戯

□休日の過ごし方
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「……暇だなぁ…」
多少、行儀悪めにソファーにうつ伏せになっている直の口から、呟きが漏れた。

カチ コチ カチ コチ

静かな部屋に、秒針の音だけが響く。
無駄に開いたケータイの画面には、一通のメールが表示されている。着信日時は昨夜。

『明日仕事入ったから、そっち行けなくなった。悪い』

(特別な用も無かったから、それはいいんだけど…)


「日曜日って、こんなに退屈だっけ?」


彼女の声は、誰にも届かずに消えていった。
(前は、どうやって過ごしてたっけ…)
うーん と少し唸ってみるが、すぐ諦めたようにクッションに顔をうずめて、直は目を閉じた。



……………‥・



「………あきやま…さん…」
「なんだよ」
「……えっ?!」
急速に意識を取り戻して、ばっ と直は体を起こした。
「秋山さん…?なんで、ここにいるんですか?」
「なんでって…思ってたより早く上がれたから、電話した。でも出ないし、もちろんメールも返ってこない」

秋山は呆れたように続ける。

「こっちまで来て外から呼んでも返事もない。出かけたのかと思えばドアが開くし、開いたら入るだろ」

直が時計を見ると、午後5時。
開きっぱなしのケータイは、充電切れしていた。

「寝ちゃった…んだ」
「不用心すぎるぞ、お前」
ふぅ と大きくため息をついた秋山。
「オレじゃなかったらどうすんだよ」
「……ごめんなさい」
直は少し落ち込んだように言ってから、
「…なにやってんだ」

ぎゅーっ と秋山の足にしがみついた。

「………」
「約束を蹴ったのは謝るが…1日家にいたのか?」
「はい………だって」
直は秋山を放して、俯きながら言った。


「ひとりの休日の過ごし方なんて、もう忘れちゃいました」


「………そうか」
くくっ と笑い始めた秋山を、直は半泣きで見上げた。
「笑うなんて酷いです!」
「いや……まさかそんな発言が飛び出すとは…」

(オレも思い出せないさ、お前と出会う前なんか)




失った生活は戻らなくて
 
全然気になんかしない
幸せだからそれでいい




******
するっとこんな発言してそう。

〜2010.07.28.までの拍手お礼
直サイド

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