嘘吐遊戯
□incantation
2ページ/2ページ
真っ暗な玄関。
「…………あ、の」
帰ろうとした彼を、何故だか引き留めたのは、確かに私。
でも、抱きすくめられて自由を奪われてるのも、私。
「秋山…さ、ん」
「…………直…」
呼ばれる名前は、特別。
腕に力が込められたと思ったら、耳元で囁かれた。
「お前のことなんか、大嫌い」
掠れた声に、どきっ と心臓が跳ねた。
その言葉は見えない鎖のように、私をみるみる縛っていく。
「あ……きやま、…さん」
こんなことしなくても…私には選択肢なんか、無いんですよ?
もう離れられないんです、私。
だってあなたは、本気で"嫌い"って言わないから。
「………っ!」
「…………」
突然、口をふさがれる。
抗えないし、するだけ無駄だってわかってる。
もっと酷く、強く、"嫌い"って言ってくれればいいのに…あなたは優しく、消え入るくらい弱く、"嫌い"って言う。
そこに込められた意味がわからないほど、バカじゃない。
「……、…大丈夫か?」
「は、…い」
その心配そうな声は、どこか満足げでもあって…優越感も混じっていた。
お前は、オレだけのもの
そう、宣言されているようで。
それが、嬉しくて。
「私も、秋山さんが好きです」
気づくと、誓いを口走っている。
だって私は、確かにあなただけのもの。
あなた以外のものに、
なる気は、無いから。
嫌いの後ろに好きが見える
嘘つきとつきあうのに慣れて
慣れすぎて抜け出せなくなる
(誰に何を言われても、気になんかしません)
******
ナニコレー/(^o^)\
2010.08.04.up