嘘吐遊戯

□あかとあお
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「直はさ、赤い糸って信じる?」
「…へ?」

大学の友達の言葉につい、変な声が出た。

「突然なによ、嘉澄…」
校舎を出て、正門に向かって歩いている途中だった。
「いやさ、昨日高校の時の友達からメールがきてね、結婚するんだって。
その子的には、もう"運命の出逢い"らしいのよ」
付き合って半年なんだけど、と呆れたような声で彼女は歩きながら語った。
「だから、直もそういうの信じてるのかなって」
「うーん…どうかなぁ」

わりと、真剣に悩んだ。
運命、とか…考えたこともないもん。

「……意外。もちろん!って即答するかと思ってたのに」
「意外…って、酷いっ」
「だってそうじゃない?ほら、彼」
嘉澄が、校門を指差す。
「…あ……」

秋山さんが、門柱にもたれて立っていた。

映画を見に行く約束をしてたから…わざわざ迎えに来てくれたんだ。
「どうやってあんな人つかまえたの?」
「つかまえたって…秋山さんは、私を助けてくれただけで…」
しかも私からひっぱりこんだの、とは言えない。
「うーん、運命だね」
腕を組んで、嘉澄は唸った。
「直のピンチを救うために現れた王子様ってわけだ!」
「王子、様……」
「…あ、私も待ち合わせあるから」

じゃ!

と、嘉澄とは門で別れた。



「お疲れ、学生さん」
秋山さんが声をかけてきた。
「約束の時間まで、まだ30分以上ありますけど…」
というか、まず待ち合わせ場所がここじゃないし。
ここから20分電車で行ったところだから、いつも通り10分前ぐらいに着く予定だった。
「たまにはお前を見習ってみようと思ってな」
「…はぁ……」
そう言う秋山さんがなんだか不思議で、気の抜けた声が出た。

…秋山さん、かぁ……。

「…どうした?」
「…………あ、はい?」
「顔になにかついてるか?」
「へ?あっ、いえ、別になんでもないです」
ぼー… っと、秋山さんを見てた。

……一般水準からみても、カッコいい部類の人…だよね……。

「……………」
「…なんだよ……」
「…なんでも…ないです……」

全然考えたことないけど…だって、ゲームを勝ち抜くのに必死だったから。

「……秋山さんは、赤い糸って信じますか?」
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