嘘吐遊戯

□全てが敵でも
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しばらく、そうしていた。

直はいつの間にか、寝てしまった。


抱きかかえて、ベッドに寝かせる。
さっきの様子とは裏腹に、安心しきった表情ですやすや寝息をたてていた。
「……………ぁ」
「お?」
なんだ?
「……き…」

寝言……か、なに言ってるか判らないが。

「……ふぅ」
本来なら、警察に言うべきなんだろうが……。
「………とりあえず、事務局か…」
ベッドから離れたところで、ケータイを取り出す。

プルルル…

プル…がちゃ

"LGT事務局です"
あの女の声がした。
「オレだ。……直が強盗に入られた」
"これは秋山様。…神崎様が、ですか?"
「あぁ。…直がファイナリストだと知っていたらしい」
"それはまた……、神崎様は?"
「今、寝かしつけた」
"…と、いうと……"
驚いたような雰囲気が、電話越しに伝わってきた。
"秋山様は今、神崎様のお部屋に?"
「悪いか?」
"いいえ。むしろ助かります"
「……………」
"明朝9時に、事務局の者が……いえ、私がそちらに伺います"
「わかった」
"それでは、失礼いたします"

ぷっ

プー プー…


ひとまず、これでいいだろう。
しかし……
「ちょっと考えれば…わかったのにな」
こんな危険もあったんだ、…バレればだが。

「さて……どこで寝るかな…」




……………‥・




翌朝。
ケータイのアラームで目を開けると、いつもと違う風景。
「……あぁ、そうか…」
直の部屋に泊まったんだった、な。

体を起こす。
あちこちが痛い……ソファなんかで寝るもんじゃないな。

ベッドの方を見ると、布団が規則的に上下していた。
アラームを鳴らしたのは、午前8時。あの女が来るまで、あと1時間。
「起こさないとな…」
ソファから降りて、ベッドに近づく。直の顔を覗き込むと、昨日と変わらない穏やかな表情だった。
「…無防備な顔して寝やがって……こんなだから…」
「…………なんで、すか…?」
直が突然目を開けた。
「……いつ起きた」
「今……です。…こんなだから……なんですか?」
…一番マズい部分を聞かれたな。
「起きて、身繕いしろ。あの女が来ることになってる。…オレは外にいるから」
「あの女……あぁ、エリーさんですね、わかりました」
特に追求する様子もなく、直はベッドから降りた。






「それでは、失礼いたします」
「ご迷惑おかけしました…」
深く、直は頭を下げた。
「いいえ、私どもの落ち度です。申し訳ありません。…では」
作法通りの礼をして、エリーが部屋を出て行った。
「秋山さんも、ありがとうございました」
そしてオレにも、直は頭を下げる。
「礼はいいって…オレは帰るぞ。片付けは、ひとりでできるだろ」
見られたくないものもあるだろうし、と言いかけた。が、

「えっ…」

「……え」
「あの…ひとりが、怖くて」
かすかに、直が震えた。
「…………わかったよ」
ため息をひとつ、ついた。

まったく……そんなだから、




世界の全てを敵に回して
 それでもキミを守りたい******
ありえるかな、この話…。

2010.07.12.up

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