嘘吐遊戯

□全てが敵でも
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「…なんだよこれ」
「……………」

目の前には、すっかり荒らされた直の部屋があった。

「…………」
直は黙ったまま、俯いていた。
胸の前で組まれた手に、目を奪われた。
「お前………!」

手の甲に、切り傷があった。

もっとも、浅くてもう出血は止まっている。
「……なにがあった」
「…………っ……」
声になっていない声を出して、また胸に飛び込んできた。
「………直…」
仕方なく、直の頭をなでる。

話せるような状態じゃ、なかった。




そのまま、15分。

「…大丈夫か?」
「………はい。…すいません」
だいぶ落ち着いた様子の直を、とりあえずソファに座らせる。その隣に座って、訊いた。
「……なにがあった。ゆっくりでいいから、話せ」
「は、い……」
直は大きく息を吸って、吐いた。
「………今日、友達と出かけて…結構疲れたんで、このまま寝ちゃったんです、気づいたら。
……それで、目が覚めたら…、………男の人が、ナイフ持って、部屋に……っ」
言葉は途切れた。襲撃者を思い出したのか、直はまたかたかた震えだした。


最悪の想像が、頭をよぎる。
服はちゃんとしている、が…


「まさか…お前、なにかされたのか?」
「……へ?」
引きつりながらも、とぼけた風の顔がこちらを見上げた。

……違う…か。

「………鍵はかけてなかったのか?」
「かけ…ました」
「……なんでお前の家なんか…」
「…お金があるって、思ってたみたいです」
「金が?」
こくっ と頷く。

「…………ゲームのこと、知ってて」

「……な」
「ファイナリストだろ、賞金はどこにあるって……何度も訊かれました」
「顔は?」
直は弱々しく首を振った。
「…そうか」

ただでさえあのゲームは、コイツにとってあまりにも過酷すぎた。
そこから抜け出せたっていうのに……。

「…怖かったな」
震える体を抱きしめた。
「大丈夫。…もう、大丈夫だ」
「…っ……はい…」
「………今夜は、ここにいるから。寝ろ」
よく考えれば、明日は日曜日。休みだ。無理して帰る必要は無い。
「でも………」
「いいから」
「………ありがとう、ございます」
「礼なんかいい」

こんな状態で一人にできるわけ、ないだろう。
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