嘘吐遊戯

□幸せ願って
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土曜日のショッピングモール。
たくさんの人で賑わってるけど、ひときわ人だかりが出来ている場所を見つけた。

「なんでしょうか、あれ…」
「さぁな」

右からはいつもの素っ気ない返事。
…気になるなぁ、あの人だかり。

「行ってみましょう?」
「言うと思ったよ」

しょうがないな、とでもいいたげなため息を吐いて、私から少し遅れてついて来てくれた。


だんだん、人だかりの真ん中にあるものが見えてきた。

「あぁ、七夕!」
「…だな」

竹が二本横たえられていて、その周りにテーブルと、短冊が用意されていた。
そっかぁー…もうすぐ七夕かぁ。

秋山さんを見上げる。

「……別に、書けばいいだろ」
「やった!なに書こうかな〜…」

うーん、就職とか…いや、切実すぎかな……。
あ、お父さん…お父さんの病気のこと、書こう。

「………なに書いたんだ?」
「内緒ですっ!」
「…どうせ自分以外のこと書いたんだろ」

…スルドイなぁ……。
とりあえず目一杯隠して、竹に結びつけに行く。

後ろを振り向くと、秋山さんもなにか書いているのが見えた。
すっごく意外、というかミスマッチな光景!
なんて言ったら、怒られるかな?

横にやってきて竹に短冊をくくっている姿も、違和感っていうかなんていうか。

「なに書いたんですか?」
「…………」
「秋山さーん?」
「…自分は言わないで、人には訊くのか」
「だってー」

人の願い事は気になるよね。

小学校の頃は…お金持ちになりたいとか、芸能人になりたいとか、みんな本当に"夢"を書いてた。
既に下がっていた短冊を見ると、"せかいせいふく"とギリギリ読めるような字で書いてあった。
スケールおっきいなー…いいなぁー。

「ほら、行くぞ」
「え?あっ、はい!」

私は秋山さんを振り返った。彼はもう、少し歩いていっていた。

追いかけようとして、ふと、一枚の短冊が目に入った。


これ…秋山さんの?


「早くしろー」
「は、はいっ!」

秋山さんはだいぶ遠くにいた。


私は、笑顔で追いかけた。




幸せを星に願って
誰かの幸せを願ったら、
自分の幸せを願われた





"あれがいつも
笑顔でありますように"







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七夕ネタでした。ちなみに、私の小さい頃の夢は「お花屋さんになりたい」。

2010.07.07up


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