嘘吐遊戯

□I'm loser.
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都内の大きなターミナル駅。線路を挟んだ向かいのホームに、見慣れたふたりを見つけた。

「…直ちゃんに、秋山か?」

秋山は右手に買い物袋を下げている。
直ちゃんがなにか話しかける度に、小さく笑みを浮かべながらに応えていた。

正直、秋山は付属品にすぎないのだが、どうしても、秋山に目がいく。


そこは、俺が欲しかった場所だから。


直ちゃんが、俺に気づいた。秋山に教えながら、こっちに向かって手を振ってくれる。
俺は多少ぎこちないかもしれない笑顔で、手を振り返す。
秋山は手をポケットに突っ込んだままだったが、その表情はずいぶん柔らかかった。

「……そうだな。直ちゃんの隣は、お前だよな」

思わず、呟きが漏れた。

「初めて直ちゃんと会ったあのときから、そうだったんだものな」


俺は最初から、敗北者だった。


彼女の隣は、すでに決まってた。


ファイナルでふたりを見たとき…俺は改めて悟った。

きっとこのふたりは、一生離れられないんだろうな、と。

それは、運命のようにも見えたし、呪縛のようにも見えた。

「俺ひとりがなにかやったところで、なにも変わらなかったんだろうな……」
直ちゃんのために、なんてゲームに戻ったが、俺はいきなり彼女の足を引っ張った。
そんな直ちゃんを支えたのも、

「……秋山深一」

天才詐欺師。
そんな肩書きは、とっくにあれの上から消え去った。



"14番線に、列車が参ります。黄色い線の内側まで…"



追憶をかき消すように、幸せそうなふたりは入線してきた電車で見えなくなった。

「…惹かれてた、なんて言えねぇよ」

その声も、ブレーキ音に蹴散らされた。




選択式*33番
ほんとは好きでしたなんて、そんな今更
お題提供:確かに恋だった




(いつまでも幸せにな、直ちゃん)







******
江藤は誰よりも直ちゃんのことを想っていると思う。ただ、いろんな面で秋山に勝てない(笑

2010.06.10.up


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