嘘吐遊戯
□I'm loser.
1ページ/1ページ
都内の大きなターミナル駅。線路を挟んだ向かいのホームに、見慣れたふたりを見つけた。
「…直ちゃんに、秋山か?」
秋山は右手に買い物袋を下げている。
直ちゃんがなにか話しかける度に、小さく笑みを浮かべながらに応えていた。
正直、秋山は付属品にすぎないのだが、どうしても、秋山に目がいく。
そこは、俺が欲しかった場所だから。
直ちゃんが、俺に気づいた。秋山に教えながら、こっちに向かって手を振ってくれる。
俺は多少ぎこちないかもしれない笑顔で、手を振り返す。
秋山は手をポケットに突っ込んだままだったが、その表情はずいぶん柔らかかった。
「……そうだな。直ちゃんの隣は、お前だよな」
思わず、呟きが漏れた。
「初めて直ちゃんと会ったあのときから、そうだったんだものな」
俺は最初から、敗北者だった。
彼女の隣は、すでに決まってた。
ファイナルでふたりを見たとき…俺は改めて悟った。
きっとこのふたりは、一生離れられないんだろうな、と。
それは、運命のようにも見えたし、呪縛のようにも見えた。
「俺ひとりがなにかやったところで、なにも変わらなかったんだろうな……」
直ちゃんのために、なんてゲームに戻ったが、俺はいきなり彼女の足を引っ張った。
そんな直ちゃんを支えたのも、
「……秋山深一」
天才詐欺師。
そんな肩書きは、とっくにあれの上から消え去った。
"14番線に、列車が参ります。黄色い線の内側まで…"
追憶をかき消すように、幸せそうなふたりは入線してきた電車で見えなくなった。
「…惹かれてた、なんて言えねぇよ」
その声も、ブレーキ音に蹴散らされた。
選択式*33番
ほんとは好きでしたなんて、そんな今更
お題提供:確かに恋だった
(いつまでも幸せにな、直ちゃん)
******
江藤は誰よりも直ちゃんのことを想っていると思う。ただ、いろんな面で秋山に勝てない(笑
2010.06.10.up