嘘吐遊戯

□闇に消えないで
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なんて思ったのはほんの一瞬。
「……!」
「お前を泣かせる度胸なんか無いよ」
だからどこにも行かない、と私を抱き寄せて、頭をなでてくれる。
「信じろって」
「信じてます。信じてますけど…」
なのに、不安が拭えない。どうしてなのか、わからないけど。
「言葉じゃ足りない、ってことか?」
「え?…っ!」
唇を指でなぞられて、次の瞬間はもう口をふさがれて。
「…………」
「………、…オレを信じろ」
「は……い」

ぱんっ

「きゃ……」
突然、視界が真っ白になって、耳にテレビの音が入ってくる。電気が回復した、みたい。
「……………ぁ」
やっと開けられた目に最初に映ったのは、秋山さんの優しい顔だった。
「大丈夫か?」
「は、はい」
…のはいいんだけど……ち、近い…っ!
「……あ、あのその、秋山さん…」
鼻がくっつくほど近い…!
「なに動揺してんだよ」
「だって、ち、近い…です」
「今更か?」
「そ、それは…そうですけど……」
「………ぷっ…くくっ」
秋山さんがふきだした。と同時に、顔が離れた。
「な、なんですかぁ?」
「いや……面白くて」
「酷いです!からかってるんですか?」
「離れるな、って言ったのはお前だぞ?」
「い、言ってません!私は、置いて行かないでって言っただけ…あ」

ぎゅ と、頭を抱きしめられる。

「置いて行かないし、離しもしない」
「……秋山さん…」
「安心しろ」
「…はい」

わかりました、秋山さん。
不安じゃ、ないんです。

「あの…じゃぁ私、帰ります」
「あぁ。…駅までおくるよ」
立ち上がりかけた秋山さんに、首を振った。
「いいです、雨も降ってますし」

いつも一緒にいたいって、思っちゃうだけでした。




選択式*495番
不安になった私が自分から彼に触れた瞬間
お題提供:確かに恋だった




(もしも遠いところへ行くなら、私も連れて行ってくださいね)






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結局、秋山は直ちゃんを送っていったと思います。

2010.06.01.up

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