嘘吐遊戯
□闇に消えないで
1ページ/2ページ
ぱちんっ
「………へ?」
秋山さんの家で、ソファーに座ってテレビを見ていたとき。
そろそろ帰ります、と言おうとした瞬間に、それは起こった。
「…停電、だな」
「真っ暗…ですね」
雨も降ってるから、月明かりすら無い。音といえば、雨が窓を叩きつけるそれだけ。他は、なんの音も無い。
「懐中電灯取ってくるよ」
「あ……!」
「……直?」
とっさに、立ち上がったらしい秋山さんの手をつかんだ。
「えっ…と……」
そして、言葉につまる。何故引き留めたかなんて、答えられない。
ただなんとなく…秋山さんが、どこかに行っちゃうような、そんな気がして。
「置いて…行かないで、ください……」
「………はぁ?」
半分呆れたような、笑った声が降ってきた。
「なに言ってんだ、お前」
「だ、だって…」
ぎしっ と、ソファーがきしんで、秋山さんが座る気配がした。
「わかったから、手、離せ」
「は…はい」
握っていた手を離すと、暗闇にひとりで放り出されたような気分になった。慣れてきた目が、ぼんやりと彼の輪郭を捉えるけれど、それはいかにも不確かなもので。
不安。
このまま、秋山さんが闇に溶けちゃいそう…。