嘘吐遊戯

□ゲームセット
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帰りのバスを降りた。
バスの中からは一言、高い声でお礼が聞こえてきたのだが、少し振り向くだけにした。

古いエンジンの音が日常への回帰を促して、バスが去っていく。
それを見送ってから歩き出そうとした時に、

「……―――」

バスの向こう側に立っていた人物に気付いた。


「…おかえりなさい、秋山さん」

「………ただいま」


直はてくてくとオレに向かって歩いてきた。
その速さはだんだん速くなっていって、最終的には結構なスピードで、オレに飛び込んできた。

「………心配してました」
「なにを?」
「なにをって……だって…行ってきたんですよね」
「あぁ」

前日、ゲームに参加することをメールしておいた。
返事は一言だけ、




"頑張ってください"




「……どうしてここにいるんだ」
「福永さんから聞きました」

あのキノコか。
どうして事務局側にいたのかは知らないが、ゲーム後に見せた顔は絵に描いたような"ご機嫌ななめ"だった。

……きわめて演技的な。

「…どうでした?」
「うん、負けたよ」
「負けた…んですか!?」

心底驚いたような顔が、オレを見上げてくる。
その視界を遮るように、右手で前髪をくしゃくしゃにした。

「あぁ。負けたよ」
「だ…誰に……ですか?」
「誰って……簡単に言うと、お前に負けた」
「…はい?」
「大丈夫、全員負債は無しだ。…利益も無いが」
「………よくわからないですけど、つまり、わざと負けた……ってことですか?」
「そうだ」

それを聞くと、さっきまでの暗い表情が一変、最高に明るいそれに変わった。

「さすが…秋山さんです!」
「…まったく」

くく、と笑いが漏れた。


ようやく、日常に戻れる気がした。

この笑顔を見て初めて、本当にゲームが終わった気がした。
ゲームセットが告げられたのは、もう……何時間も前のことなのに。


「今日は、私がご飯作りますね!」
「今日に始まったことじゃないだろ」
「そうですけど、でも、作りたいんです!」
「わかったわかった」






君があまりにも大きな存在
 
傍にいてくれないことが
こんなに心細かったなんて





(まったく、このバカには敵わないよ)






******
優ちゃんに裏切られたとき、秋山はそれなりにショックを受けたと踏んでいます。
直ちゃんの不在は、秋山最大のピンチなのではないかと思っています。
ゲーム中、秋山は絶対に直ちゃんを思い出して気持ちを奮い立たせていたと思います。

無論、すべて私の妄想です!\(^v^)/

秋山さんの職業は長編のほうでつじつまを合わせさせていただきますので、もう少しお待ちを。


2012.03.16.up

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