嘘吐遊戯

□嘘吐き注意報
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「…すー……は〜ぁ」

私は、秋山さんの部屋の前で、大きく深呼吸をしていた。

今日は…4月1日。

嘘をついてもいい日。
絶対騙されない!

「…おい」
「きゃあ!」

突然声をかけられて、裏返った声が出た。
振り向くと、コンビニの袋を手にさげた秋山さんが居た。

「なにやってんだ」
「いや…あの…」

…なんだか、もう騙された気分。

私の様子が不自然に見えたのか、秋山さんは少し首を傾げた。

「…どうかしたか?」
「いえ、なんでも!!」

納得いかない、という顔をしながらも、秋山さんは部屋の鍵を開ける。

「ほら」
「ぉ…お邪魔します」







その後は、夕方まで秋山さんと過ごした。

「もう春ですねー」
「そうだな」
「……ふぁぁ…」
「春眠、暁を覚えずか?」
「―!!」

会話はたわいもない物ばかりで…エイプリルフールだからと構えていた自分が、恥ずかしくなった。

秋山さんは、嘘、つかなくなったんだなぁ…。

「じゃぁ、私、帰りますね」
「駅まで送るよ」
「大丈夫です」
「大丈夫じゃない」
「へ?」

なんか…いつもと違う?

「あの…」
「オレの嘘にひとつも気づかないような奴を、独りで帰せるか」
「え!?」

嘘?どれが?
ひとつもって、いっぱいあるって事?
ウソっ、いつ?


「……ぷっ」


思考回路がパンクしそうな私を見て、不意に、秋山さんがふき出した。

「まったく、お前は……」
「………?」

しょうがない奴だな、みたいな口調。



「オレは今日、ついさっきまで、ひとつも嘘ついてないよ」



「……え?」
「だから、さっきのだけが嘘」

くっくっ、と笑いながら秋山さんは続けた。

「エイプリルフールだから、ずっと警戒してたんだろ?」
「うっ…」
「丸分かりなんだよ、お前の考えなんか」

…騙された。
それはもう、すっかり。

「もー、秋山さん!!」
「ならご希望通りに、駅まで"お前なんか嫌いだ"って言い続けようか?」
「……それは…」
「…ほら、そういう顔する」
「!!」

すっ、と秋山さんの手が私の頬に触れた。

「そんな顔、見たくない」
「……あきやまさん…」





A Liar's Day!!
 
どれだけ正直者が気をつけても
詐欺師の方が一枚上手






「…おい、なに泣いてんだ」
「なんか……嬉しくて…っ」
「まったく…バカだなお前は」






******
直ちゃんは一生秋山さんに勝てない、ということが容易に想像できます(酷
「エイプリルフール」よりも「ライアーズ・デイ」のほうがカッコよくないですか?(訊いちゃった

東北地方の皆さんが少しでも笑顔になってくれることを願って。

2011.04.01.up


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