仮想空間

□百花繚乱
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「幸村達、遅いな」
「放っておけ」
「だが、何かあったのでは…」
「もしそうだとしても、あのふたりなら大丈夫だ。座れ、兼続」

三成様は、探しに行こうとする兼続様を抑える。
さすが…かな?
最初は冷血漢だと思ったけど…そうでもないって事が、最近わかってきた。

「綺麗に咲いたねぇ…それに負けないぐらい、あんたも素敵だ」
「殴るわよ」
「おぉ、怖いなぁ。でも、その怒った顔も「キモッ!」
「黙らんか!せっかくの趣が台無しじゃ」

それに引き替え、なんであたしは怒られてるのよ!

「うるさいわねー、あんたこそ、もっと静かに喋れないの?」
「はん、貴様よりは静かに話しておるわ」
「そんなことないわよ。十分耳障り」
「口が減らん奴じゃな。これでも口に入れておくがよい」

ずいっ、と差し出されたのは重箱の一段。彩りも綺麗に料理が詰められている。

「…なによ」
「わしの手製じゃ」
「あんたの!?」
「そうじゃ。食ってみろ」

…よーし、粗探ししてやる!

「じゃぁ、遠慮なく……いただきまーす」

お箸で魚の煮つけをほぐして、口に入れる。

「……!?」


…うそ、超美味しい…!


「どうじゃ、美味かろう?」

政宗は、したり顔でこっちを見てくる。

「おぉ!お前にこんな特技があったとは…驚きだ!」
「俺も最近知ったんだよ、政宗のこの特技。びっくりしたよ」
「俺は前に振る舞ってもらったことがあるが…また腕を上げたな」

みんなしてべた褒め!?
…いや…美味しいのは、事実なんだけど…。

「こちらは甲斐姫が作った物か?」
「え?あぁ、そうよ」

ぱく、とあたしの返事より一瞬早く、兼続様はあたしが持ってきた料理を口に運ぶ。

「おぉ!これも美味いな!」
「…ふむ。こちらのほうが俺の口には合う」
「本当!?」

兼続様に続いて、三成様も褒めてくれた。

「お!確かに美味いなぁ」
「……てことは、どうやら引き分けのようね?」
「…ふん」

政宗は子供のようにそっぽを向いた。やった!

「おーい!みーんなーぁ!」
「おぉ、幸村達だ!」
「お待たせしました」

話の中心が、あたし達から幸村様達にすり替わる。

「…もらうぞ」
「へ?あぁ、うん」

それを見てなのか、政宗があたしの料理を口に入れた。

「…………」
「………………」
「………」

あたしは、咀嚼する様子を見てるしかない。
…早く何か言ってよ!




「……美味い、な」




「―!!」
「…………」
「…なに?突然静かになったわね」
「昔……、いや」

何かを言いかけて…止めて、政宗はゆっくりと後ろに倒れ込んだ。
仰向けになって、ぼーっと宙を見上げてる。

「ねぇ、ちょっと何なのよ」
「桜が綺麗じゃな…」
「聞いてんのー?」
「桜は良いな」
「ん?」



「桜は綺麗じゃ。…乱世など、無かったように思わせてくれる」



ぽつり、と呟くように言った。

「……どーしちゃったの、気持ち悪い」
「貴様のせいじゃ」
「はぁ?」
「…………」

それっきり、政宗は口を開かない。
一体なんなのよ!

「……………」
「………」
「…………」
「…わしは、できるぞ」
「? 何よ突然」

言うなり、ぴょこっと上体を起こした。
そして、らしくないほど穏やかな顔をして言った。

「来年もここで、花見をしようではないか」
「なに、どーしたの?」
「嫌か」
「うっ………嫌じゃ、ないけど」
「決まりじゃな。…それまでに、せいぜい料理の腕を上げておけ」
「ちょっと!何よそれ!さっき美味しいって言ったじゃない!」






******
二段目、政宗×甲斐姫。
テーマはいつの間にか『花より団子』。あちゃー。

政宗が料理上手、というのは実話です。無双Chronicleでもこの逸話はイベントに採用されてました。
ていうか、甲斐姫って三成達をなんて呼ぶ?政宗はもう呼び捨てでいい、よね?

最初は料理が玉子焼きだったんだけど、戦国時代には玉子焼きが無かったっぽいのでやめました。
お袋の味を……ね。



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