仮想空間

□百花繚乱
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「幸村様!早く!」
「わかった、そう急くな」

そう言いながら、幸村様には全く急ぐ様子がない。
上を見上げながら、ゆっくりと歩いている。

「急がずとも、桜は逃げない」
「……そうですね」

向かう場所には、もう三成様や兼続様、甲斐ちんとか政宗様と雑賀の頭領がいるはず。
あたしと幸村様は手にお弁当とお酒を提げているけど、これはみんなで持ち寄ってる。

だから確かに、急がなくても大丈夫。

「綺麗だな」
「満開ですもんねー」
「花は、あとは散るだけか」
「…え」

つい、幸村様の顔を見た。

「……どうした?」
「…いいえ、なんでも…」
「そうか?なら良いのだが」

そうして、また幸村様は桜を見上げる。

…この方は、散る桜が美しいって感じる方なのかもしれない。
だけど、その話に触れたことはない。


聞きたくない。
死ぬのが美しい、なんて。


「…そなたは」
「―はいっ!?」

意識の外から話しかけられて、あたしは裏返った声で返事をした。

「咲いている桜と散っていく桜、どちらが好きだ?」
「――!」

なんで!?
心、見透かされてる?

「……えっと…」
「…………」
「…咲いてる桜、です。やっぱり」
「そうか。私は…」

やだ。
聞きたくない…




「桜はどの瞬間も好きだな」




「…は」
「蕾が膨らんでから、開き、散っていくまで。…散ってからの芽吹く葉も、私は好きだ」
「葉桜…も」
「桜はいい。……どの瞬間も気高く、美しい」

………。

「ずるいですよ幸村様!二択だったじゃないですかぁ!」
「そうだな、すまない」
「んもー…」

散ってからも、美しく。

散らない花は無いし、死なない人もいない。それは仕方無い。
でも、花はきちんとお世話をすれば長く咲く。


人も。
それを、あたしがすればいい。


「いきましょう、幸村様!…ちょっと待たせすぎですよ」
「そうだな、行こう」






******
今回はお花見っぽく四重のカップリング重箱。
まず一段目、幸村×くのいち。

なんかこのふたり、こういう話しか作れない。幸村がね…扱いにくくてね…。ゲーム中ではあんなに操作しやすいのに!(笑
くのいちの「いきましょう」は掛詞にしといてください。



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