仮想空間

□喧嘩師同士
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「…おや」
「どうしました?幸村様」
「あれは…政宗殿と甲斐殿ではないか?」
「…あー、そうですね」
「……喧嘩か?」
「喧嘩ですねぇ」
「止めに入ったほうがいいだろうか?」
「いやぁ、ほっといていいと思いますケド」
「そうか?」
「今ヘンに割って入ったら…」
「入ったら?」
「政宗様に撃たれるか、甲斐姫に殴られるかだと思いますよ。…だいぶいきり立ってますし」
「……そうだな」



「……おう?」
「どうした、慶次」
「ありゃぁ…政宗じゃねえか?」
「む……そうだな。相手…は、北条のところの甲斐姫か」
「痴話喧嘩かね?」
「かもしれんが…色情事など最も似合わない組み合わせに見えるのだが…」
「そいつぁ、失礼ってやつだぜ?…で、止めるか?」
「放っておけ。"黙っておれ!"と撃たれるぞ。甲斐姫は武勇伝をよく聞くしな」
「はっはぁ、まったく同感だ。しかし政宗の奴、あぁいうのが好みなのかね?」
「知らん。だが、ぶつかり合ってこそ、絆は深まる」
「完全にぶっ壊れちまうこともあるけどな」
「そうなったら、それまでだったということだ」
「…結構辛辣なこと言うねぇ、お前さん。ま、正しいけどなぁ」



「殿、ちょっと」
「なんだ左近、よそ見せずに手を動かせ」
「あれ、伊達家の当主と甲斐姫じゃないですかね?」
「政宗か?…あぁ、だな」
「あんまり見ない組み合わせですけど…喧嘩ですかね?」
「あれが喧嘩でなければ、なにが喧嘩なのだ」
「こりゃごもっともで」
「それに、あのふたりは会えば大抵ああだ。喧嘩そのものは珍しくはない」
「ほう……、おや」
「今度はなんだ」
「甲斐姫がどっか行っちゃいますね…泣いてるみたいですけど」
「だったらなんだ。…放っておいても、幸村の所のくのいちあたりがなんとかするだろう」
「それもそうですね。…しかし、どこにどういう縁があるか、わからないもんですねぇ」
「縁など、そういうものだろう。いいから手を動かせ」



「甲斐殿、どうされたのです?」
「ゆ、幸村様……やだ、見てたんですか……ひっく」
「甲斐ちん、大丈夫?」
「ほんっとムカつく!あんな奴、くたばっちゃえばいいのよ!」
(これは…尋常じゃないですよ)
(そうだな……)
「なにがあったのさ、言ってみ?」
「……うわーん!」
「ちょ、あたしを叩かないでよ!」
「落ち着かれよ、甲斐殿!」
「とりあえず、うん、お団子でも食べにいこうか?おごるよ!」



「あーぁ、泣かしちまったなぁ」
「…兼続に慶次か。なんじゃ、見ておったのか」
「たまたま通りがかってな。…それにしても、感心しないな」
「なにがじゃ」
「女性を泣かせるとは…」
「わしはなにもしておらん、思ったことを言うたまでだ」
「それがマズかったから、泣いちまったんじゃねぇか」
「追いかけないのか?」
「何故わしが追いかけねばならんのだ」
「悪いのは完全にお前だぞ、政宗」
「ぐ………」


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