仮想空間
□二色の攻防戦
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「チェスか…やったことないなぁ」
「はは、まぁそんなもんだよね。リンクは特に」
リンクの言葉を聞いて、ロイは笑った。
「僕も最初は、父上達がやってるのを横から見てたぐらいだった。本格的にやったのは、留学してからかな」
「僕はジェイガンとアベルから習った。落ちのびてから毎日やってたなぁ…懐かしいよ」
「一応俺も指せる」
「え!!」
アイクから思いもかけない言葉が飛び出し、リンクはぎょっとしてアイクを見た。
「さっきロイ先輩に瞬殺されたがな」
「だろうね」
「…喧嘩売ってるのか?」
「別にぃ〜」
リンクとアイクの人間関係が軽く悪化したところで、勝負は始まった。
「単純に言えば、相手のキングを追い詰めれば勝ち」
ロイは説明しながら指していく。対照的に、マルスは押し黙ったまま。
「駒は6種類あってね…」
「あのー…ちゃんと指せてますか?説明しなくても…」
リンクが不安そうに言葉を挟んだ。
「大丈夫、ちゃんと勝負できてるから」
盤上から、駒が減っていく。
「これはナイト、騎士だね」
味方を飛び越えて進む駒。
「最強のクイーン、ルークとビショップを合わせた動きができる」
真っ直ぐ進め、
「チェック」
ロイの言葉に、白のナイトで黒のクイーンを取るマルス。
「で、今度はコイツがクイーンになる」
マルス側の最終列へポーンを進め、ロイが言う。
「プロモーションっていって、ポーンが動けなくなるこの位置まで動くと、キング以外のどの駒にでもなれるんだ」
ポーンをどかし、さっき取られたクイーンをそこに置く。
「基本的なルールはこんなもんかな……さて」
ロイが説明を終えると、一手のスピードがあがる。
そしてロイは、
カン!
と、黒い駒をひとつ、動かした。
「…チェックメイト」
「くっそ、もう一戦!」
「えぇ…もう疲れたよ」
20戦全勝のロイと、全敗のマルス。
「………スゴ」
「あぁ…」
アイクとリンクは他に何も言えなかった。