嘘吐遊戯
□冬の日、
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12月24日 金曜日
PM10:53
この土壇場になってなお、オレは迷っていた。
「………………」
直の部屋の前。
右手には白い封筒。
中身はコインロッカーのキー。
どうしようもない臆病者。
自覚している。
でなきゃ、とっくに正面切ってプロポーズできている。
あのツリーの前でも、
帰り道でも、
直が部屋に消える前でも。
狡くて、臆病で、前科もあって、
だけど、
好きで、愛しくて、守りたい。
だが、こんな封筒ひとつ、郵便受けに入れられないでいる。
笑ってくれ。
悪魔でも誰でも構わない。
オレを嘲って堕としてくれ。
アイツに手が届かない所まで。
そう願うだけ、無駄なんだ。
皮肉なことに、オレには最強の天使がついている。
「…まったく、厄介な奴……」
まもなく23時。
どうする。
おとなしく帰るか。
まだ悩むのか。
背中を押すモノなんか無い。
久々だ、こんな孤独な感じ。
あぁ独りはもう
ごめんだ
かしゃん
乾いた音が響いた。
くそ、女々しいな。
なにビクビクしてんだ。
クリスマス。
元は、クリスチャンのミサの日。
カミサマなんて、救世主なんて信じたことはないが、
「オレは…赦してもらえますか、神様」
我ながらくだらないことをつぶやいて、その場を立ち去った。
いつかこの日を後悔する日がくるかもしれない。
薄々そんな気はしている。
それを必死に否定する。
明るい未来なんて元から見えちゃいなかった。
それを与えてくれたのは、お前なんだから。
「お前がなんとかしてくれるだろ」
ゲームはオレがなんとかしてやったんだから。
そんな恩着せがましいことを言うつもりは無いが…お前がなんとかしてくれると、そう信じたいんだ。
信じることを教えてくれたのは、お前なんだから。
来年も再来年も、ずっとキミと一緒に居たいから、オレはどんな罰でも受けるよ…覚悟はできてるから。