不幸なあなたに花束を
□5th:差しこむ光
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ふたりで並んでいれば、きっと見栄えがいいです!」
「…は?」
秋山は彼らしくもなく、小さくだが素っ頓狂な声をあげた。
「えっと、だから、私が白い服を着て、秋山さんが黒を着て、ふたりで並べば綺麗に見えますよ、きっと!」
(ふたりで並べば…って)
「なに言ってんだ、お前」
「思ったことを言っただけですけど…」
なにか変なこと言いました?
と言わんばかりに、直は首をひねる。
「………じゃぁ」
彼は、自分を追い込みにかかった。
「オレとお前で結婚式は無理だな」
もちろん秋山は、冗談で"結婚式"と言った。
というより、特になんの意味もなかった。ただ単に、彼の"白"のイメージが、結婚式の新郎と新婦に結びついたから言っただけだった。
一方の直は、最初は意味が分からなかった。しばらくして、あ! と、手をたたいて、
「白いタキシードですか?」
「あぁ」
「じゃぁ、黒い燕尾服を着ればいいです!」
「……え?」
彼にとっては、思いがけない反撃だった。
「最近はホワイトタイの新郎が多いみたいですよ。それに、燕尾服の方が格が高いんですよ!知ってました?」
と自慢げに語る直。それを見ていた秋山は、
「……はぁぁ〜…」
と、盛大にため息をついた。
「お前本当にバカだな」
「な、なんでですかぁ!?本当ですよ?タキシードより燕尾服のほうが…」
「いや、それはわかった」
(お前はなにも分かってない。天使が悪魔に恋をしてるようなものなんだぞ?)
「…なんでそんなに詳しい?」
「え?あぁ、友達が結婚するそうで、受け入りです」
にこっ と直は笑った。
(……いや、悪魔が天使に恋をしているのかもな、これは)
ふと、彼の脳裏に、セミファイナル前半戦が蘇った。
全員が天使、かつ十字架4本以上で終わったあのゲーム。
(…オレも、なれるだろうか?
悪魔から…天使に)
直の笑顔を見ながら、秋山はぼんやり考えた。