□恋愛メタファー(拍手)
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窓から見えるのは近くに迫ったイベントの名前をかたどったピンク色の文字。あからさまに視線を逸らしてはまた目で追う彼。



欲しいならそう言えば良いのにと私は思って仲達の精一杯の『気にしていないふり』を気にしていないふりをした。



去年は上司の信じられない数のチョコレートを捌くのに苦戦してバレンタインに浮かれる人全部が糖尿病に倒れればいいだなんて豪語していたのに、今年はその話題にはノータッチ。



大きなプロジェクトの土台になる曹丕さまと他社の幹部の顔合わせに向かう車内で助手席にいた彼が私に小声で何か言った。



「何、聞こえない」



「いらいらしている時は甘いものがいいと聞く」



だから何かを寄越せと言う。



「……わかった」



気にしていないふりもそれを更に気にしていないふりもやめて約束すると仲達は少しだけ笑った。



「(いらいらなんてしてないじゃない)」



(前回の秘書コンビ)



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