Actual×Dream
□はじまりD
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私の迫力に若干飲まれていた花井君だったけど、気を取り直して話し出した。
「・・とにかく。別にオレ、野球じゃなくてもいいし・・。」
コン コン
軽快な音が響く。
モモカンがバットで、サッカーで言う所のリフティング、ってヤツをしている。
はー、凄い。
あんな細いバットで、あんな小さなボールを連続して当てるなんて。
見た目以上に難易度高いよね?
なんか、改めてモモカンの凄さが浮き彫りになる。
「キャッチいくよ!!」
そう言うと、ボールを高く上げ、その間にバットをしっかりと握り、キィン・・と高く、真上にフライを上げた。
同時に阿部君はパッと私の手を離し、ミットを構えた。
長い長い滞空時間のち、阿部君は難なくボールをキャッチした。
ナ、ナ、ナ・・・・
「ナイキャッチ!!」
うわぁ、阿部君のキャッチ、生で見ちゃった。
カッコいい〜!
モモカンと、中学時代の監督を比べて頭の中グルグルになってる花井君に、当のモモカンは言った。
「そーだ、ジュースがあるんだっ。せっかくだから飲んでって!!」
うあ、このセリフは!!
至近距離にいる阿部君から目を離すのは非常に惜しいけど、これから起こる事は今しか見る事はできない。
見逃すわけにはいかないわ!
わくわくしながら見守ると、モモカンはベンチ付近に置いてあった袋から、甘夏を取り出した。
「へ?飲むって・・。」
袋から出したのは、間違いなく甘夏
飲む、じゃなくて、食べる、の間違いじゃ?
とざわつくらーぜを余所に、モモカンはおもむろに
「待っててネ、今・・。」
すぅぅ、と大きく息を吸い込むと
「ふん・・んぐああああっっ!!」
両手で甘夏を握り潰したのでした。
うひゃあ、近くで見ると圧巻!
ボールに絞ったジュースをチョポチョポとコップに移し、
「はいっ。」
にこやかな笑顔で花井君にジュースを差し出した。
対照的に、花井君は青い顔でそれを受け取り、飲み干した。
多分、女の底知れぬ怖さを感じながら。
へへ、なんか気分いーや♪