Actual×Dream

□はじまりE
1ページ/2ページ

「おせ・・。」

誰かが呟く。

そしてその声は三橋君にも届いていたらしく、ゆっくりと頭が下がっていった。

「三橋!!」

バシッと鋭い返球。

再び構える阿部君。

それは「もう一球」の合図。

おどおどしながらもそれに応え、再び投げる。

また返球、そして投げる・・。


これを数回繰り返し、阿部君はスクッと立ち上がったかと思うと、ずんずんと三橋君に歩み寄る。

・・この上なく目をギラギラ輝かせながら。

「三橋、球種は!!」

聞きながら、その目は輝きを失う事はない。

「へ?・・と。」

「はっ、変化球ナシかよ。」

答えずにいると、花井君が呆れるように言った。

「あ!ある!!」

「球種は!!」

相変わらずギラギラした目の阿部君。

ちょっと怖い・・。

「多分・・カーブ。スライダーのつもり・・。」

三橋君は、こーゆーの、こーゆーの、と手で動きを表現し、蚊の鳴くような声で説明した。

「多分とかつもりとか・・あのさ、投球指導受けた事ある?」

阿部君に聞かれ、赤くなって首を横に振る三橋君。

なるほど、だから・・と阿部君は呟いた。

そして

「花井、打席立ってくんないか。」

「イヤ、悪いけどオレ入る気ないし。」

「4番だったんだろ。3打席勝負しようよ。」

自信たっぷりにそう言った。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ