宝物
□誓いはずっと、続いてく
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誓いは今日、永遠となる−−。
紅本家貴陽別邸はその日、とても賑わっていた。
「違う違う!その壺はここじゃなくてあっち!!」
「手が開いてる奴は手伝ってくれ!招待客の案内だ!!」
「誰か厨房に行ってお菜の確認をしてきてちょうだい!!」
家人たちがせわしなく動く中、百合は邸の一室にいた。その室には、こう書かれ
てあった。
『花嫁控室』、と。
今日はここ紅本家貴陽別邸において、紅家当主の結婚式が行われるのだ。
結婚式といっても、貴陽での結婚式は仮のものである。仮、といっても婚姻はこ
こで行う。
だが、紅家当主である以上は紅州の民にお披露目というものをしなければならな
い。
つまり、そのためには一度紅州に帰らねばならないのだ。
当然、黎深はそんな面倒くさいことはいやだと渋った。
しかし、玖琅の懇願と邵可の頼みと、百合のおずおずとしたたしなめに黎深は折
れた。
だが、貴陽での友人や知人を紅州まで招待するわけにはいかない。
そこで、貴陽でも結婚式を行うことにしたのだ。
そして、百合はいまひとりで控え室にいた。