星霜
□星霜X
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刀@繰り返される朝
「さあや、おはよう」
「おは、よう…ございます」
目を開けるといつも蒼い髪の天使様は笑ってて。
「まだ足りない?」
唇に触れる指が、キスを誘う。
「…はい」
にこりと微笑を返し、天使様の首に手を回し、唇を押し付ける様にして奪う。
:バァン:
「さあやー、飯ー!」
「ん…机に用意してある筈ですが」
今朝は水入り。
キスを中断させて離し、大きな音をさせてドアを開けて現れた黒髪の悪魔に目を向ける。
「一緒に食うんだよ!」
朝から無駄に元気だなぁ…。
「…さあやは今起きた所なんだ」
不満そうな精ちゃんから離れて、ベッドから降りる。
「おはよう。汀」
汀に言うと、頬にキスが落ちてくる。
「おはよう。今日も可愛いな」
「何で毎朝キスするんだよ!俺が居れば十分だろ!?」
途端に怒り出した。
精ちゃんは他人とキスする私が嫌いだから。
「朝の挨拶はキスって決まってるからだろ。…な?さあや」
「はい」
「っ!さあやは俺とだけしてれば良いんだよっ!」
「汀。唇の方に変えて」
うるさいので今朝から変更。
「良いぜ」
「さあやに触るなっ!」
汀とキスする前に、精ちゃんの腕に捕まった。力が強くて、少し息苦しい。
「お前なぁ…、朝からさあやに依存しすぎだろ」
「君に言われる筋合いはないよ。さあやは俺のものだから」
「精ちゃん?」
頬にキスされた。何で?
「消毒。」
「はぁ…?」
意味はよく分からなかった。
「…さあやには嫉妬なんて難しすぎて分からねぇぜ」
汀には分かったみたい。
「…さあやが浮気しないなら良い」
「浮気?んなもんしてねぇだろ」
「…」
「さあや、飯食おうぜ。腹減った」
「先に食べてて下さい。精ちゃんをなだめないと動けません」
「分かった。幸村。朝からさあやを襲うんじゃねーぞ。体力ねぇんだからよ」
「…」
:パタン:
「少し、腕の力を緩めて下さい」
腕に手を乗せてお願いする。
「あ……うん」
汀がいなくなると精ちゃんは警戒を緩めて、話を聞いてくれる様になる。
「汀の事はあまり気にしないで下さい。澪が朝に弱くてなかなか起きて来ないから寂しいのですよ」
「…」
「一人の食事はおいしくないから」
「…そうだね」
「精ちゃんも朝御飯、一緒に食べましょう?」
「…君が着替えてから、ね」
「……触るだけにしておいて下さい」
「嫌だ」
首にキスをして、胸を触ってくる手を振り払って機嫌を悪くさせた方が、着替えの時間を短縮出来るだろうか?
「当て付け行為より、素直に好きだと言ってあげなさい」
「え?」
「その方が汀も喜びます」
精ちゃんと汀が仲良くなる事にはあまり歓迎出来ないけど…。
「…意味が分からないんだけど」
「?精ちゃんは汀が好きなんでしょう?」
「……」
固まった精ちゃんが『有り得ない』と照れ始めるまで、私はまだ動けなさそうだ。
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