星霜
□星霜T
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3話
『二人目のマネは幸村の従姉妹』
── 月曜の朝
「皆、紹介するよ。おいで」
いきなり挨拶の後。幸村が笑顔で宣言したかと思えば、すぐに笑顔を後方に向ける。
「「??」」
だが幸村のやることなので誰も何も言えない。
「……お邪魔、します」
幸村の後ろから無表情なさあやが呟く様にして現れる。
「あー…えーと、幸村部長の彼女さん?」
沈黙を最初に破ったのは切原。
「違うよ」
笑顔で否定するのは幸村。
「「は(え)?」」
皆が困惑し、さあやを見る。
「……」
視線から逃れようとじり、と後退しようとしたが、あっさり幸村に腕を捕まえられ、非難する様な目で幸村を見上げる。
「さあやはね、俺の従姉妹。ちなみに同じ三年だよ」
「「はぁぁ!?」」
最初に声を上げたのは、お子ちゃまな二人。
「幸村の従姉妹?参謀…」
「事実だ」
「……では彼女、と言う噂は…」
「嘘よ」
「「「姫」」」
皆の困惑を遮ったのは、皆のアイドル。マネージャーの姫。
立海男子テニス部の紅一点。
「あ。姫…」
「さあやっ、どうしたの?わざわざ私に会いに来てくれたのっ?」
嬉しそうに駆け寄り、さあやの両手を取り、握る。
「んーと、会いに…とは少し、違う」
「え?」
「お手伝い、に来た。」
「え…さあや、が?私、そんなの聞いてない……精市?」
「昨日決めたんだ。ね、さあや」
「うん」
「「「(ああ…成程)」」」
さあやに憐れむ様な視線を向けながら納得する。
「さあや!話してくれれば良かったのに!」
「精ちゃんが姫には内緒にして驚かせよう。って…驚いた?」
「すっごく驚いたっ!!でも…嬉しいっ!」
「そっか」
姫の笑顔に対してもさあやの無表情は変わらず。
「…変な女」
「ブン太っ」
「丸井先輩!」
ぼそりと呟いた丸井を咎めるのは特に仲が良い二人。
「丸井、何か言ったかい?」
「何もっ!」
幸村の笑顔に脅え、即答に近い速さで否定。
「そう…さあや。皆に自己紹介して」
「………私から?」
「「「…」」」
不満気な声にしんと静まり返る。
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