星霜

□星霜T
4ページ/126ページ




二話

『嵐の前日』






───  同時刻。


別の場所で、さあやも怒っていた。


「精ちゃん!」

「さあや?どうしたの?」

突然、自室に現れたさあやに驚くでもなく振り返った幸村。





「今、暇でしょ?ちょっと…詐欺師、呪ってくれない?柳生に変装して姫にベタベタ触って…!柳生がセクハラしてたら紳士なんて呼ばれてる訳ないでしょっ!

ちゃんと守ってよっ!」

目が据わり苛立ちを幸村にぶつけるさあや。





「へぇ……仁王が柳生に変装して遊んでるんだ…。そうだね、柳生の評判も悪くなってしまうしね…。

第一、俺が許せないなぁ…。

さあやも怒ってることだしね。一肌脱ごうかな…(黒笑)」

にこりと笑いながらも空気の温度が下がり、冷えていく。





「頼んだからねっ!私も詐欺師をなるべく近付かせない様にするから。

…あとは真田と…そうね、デブ辺りも呪っておこうかな。
…ふふ。明日が楽しみ」


にっこりと笑いながら物騒な言葉を口にするさあやは幸村と似ていた。



「フフフ…。明日の練習が楽しみだな。今日の姫に対する行動で刑の重さを決めよう…(黒笑)」



「いいわね。それ」

怯む事なくにこりと笑い返してすら見せるさあやは、そんな幸村に慣れている様だった。





「それに、練習は久しぶりだからな…。やっと復帰出来たしね。これから張り切って頑張らなきゃ。
…そうだ。どうせだからさあやも練習見に来なよ。

愛しの姫を見放題だよ?」





「そう…ね。よく働く姫は可愛らしいし、見に行こうかな。

…ようやく、だものね。大好きなテニスをやってる精ちゃんは格好良くて好きだし」

幸村の手招きに応じてベッドの端に腰かけるさあや。





「ありがとう。さあやにそう言われると嬉しいよ。俺もそういう昔から変わらない一生懸命な姫の姿が好きだったりするしね」


「あ、ついでに何か差し入れしてあげる。何がいい?姫の好きな甘い物…と辛い物、とか?」

首を捻りながら考え、呟く。



「差し入れかぁ……ん〜…甘い物は絶対ね?姫、喜んで飛んで来るから。
俺が今差し入れに欲しいのは新しい『おもちy…』かな??
……なんて冗談だけどさ(黒笑)」


「そんなの私が欲しい位だわ」

とさあやは拗ねた様に言い返し、思いついた様に笑う。


.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ