It snows.

□#5
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僕はただ時間が流れていくのを感じて
何もしないでマスターを見つめていたたけだったのに
こんなに時間が早く過ぎていくのを感じたり
こんなに時間が止まればいいと思ったことはなかったに

It snows_5

目覚ましが鳴り響く。
その瞬間すぐに5時なんだなと悟り、早速マスターの部屋に押しかけた。

「あ、れ」
つい声が漏れる。
マスターの姿がない。
抜けの殻をただ見つめていると軽い痛みが頭を通る。

「って」
「おーはよ」

聴き慣れてきた凛とした声に反応する体。
頭の上にはすでに着替えているマスターの拳が置いてあった。
「おはようございます、早いんですね、今日は」
「うん。休日だからたまには早起きもいいかなーってね」

今日は寝顔見れなかった。
もう少し早く起きてれば、と、悔しい気持ちが半分と
この家に来てからはじめての休日を嬉しく思っていた。

「じゃあ、学校行かないんですね」
「行かないよ。今日はバイトもないし、なーんもすることないんだあー!」

嬉しそうに伸びをするマスター。
これで寝顔の代わりになりそうだ。

そうだ。
今日はマスターとずっと一緒にいられる。

「ってことでレン、どこか出かけない?」
「出かけるんですか?」

デート
なんてすぐに思いついた僕はマセてきてるのかもしれない。
別にデートって訳ない。ただ、出かけるだけ。

「うん、嫌ならいいんだけどさ…」
「行きたいです!」

不安そうなマスターの顔が一瞬で明るくなるのがわかった。
デートであっても、なくても、嬉しいことには変わりない。

「そーだ、今日はデパート行って新しい服買おうね。それと材料買ってきて後でお菓子でも作ろうか!それと調教もしなきゃね」
「調教?ですか?」
「だってボーカロイドだもんね?レンも歌いたいでしょ」

微笑むマスターの言葉に驚いていた。
今までの家ではいつも必死にマスターの機嫌を取る為に、歌を上手く歌えるかとか失敗しないかとかそんなことばっかり考えていた。
この家に来てから、マスター自身のことばっかり考えていて歌のことなんてさっぱり忘れていた。
VOCALOIDとして失格なのか?

「えっと、歌いたいです、けど」
「だったらいいじゃん。私も一応レンのマスターなんですから」

胸を張るマスターに微笑みが毀れる。
今日は色々やることがあるみたいだし、大変そうだけど
マスターとずっと一緒にいられるんだ。

「じゃあ、レンも着替えて着替えて!早く出かけるんだから」
「ああ、はいっ」

マスターは僕の背中を押して僕の部屋まで連れて行った。


「寒む」
「だねえ」

久しぶりに出る外の空気は凍てついていた。
マフラーつけてきて良かった。
マスターは手を重ねて擦っている。
手が、寒いのかな。

「ん?」
「寒そう、だったので」
実際、僕が寒かっただけなのかもしれない。
僕はマスターの手をぎゅっと握った。

「えへ、ありがとー」
「いえ」

手が暖かい、というか、心が温かくなってきた。
こんな気持ちになったのは初めてで少し戸惑っているとマスターは「さむいから早く行こう!」と少し早めに歩いた。

そんなの早く歩いたら手、繋ぐ時間が短くなっちゃうのに。
でも大丈夫かな。まだまだ僕たちには時間がある。
捨てないと言ってくれた。
僕は出て行くつもりもない。
僕とマスターは死ぬまで一緒だ。
まだまだ、時間はある。


辺りは見覚えのある
「ここ、前来ました」
「前のマスターと?」
「はい。立て替えたんですかね、前より大きくなってます」
「あ、そういえばそうかもね」

前のマスター。
マスターになんとなく似てた気がする。
そういえば同い年かも。

中に入ると少しだけ暖かかった。

「レン、ほしい服あるー?」
「あ、えっと特に無いです」
「そー?」

会話続かない。
僕は話すのが下手なのかもしれない。
マスターは男子用の洋服を手に取って「これどうかな?」と聞いてくる。
勿論文句はない。
「それでいいです」と言うとマスターは頷いた。

「わかった。後どれにしよっか?」
「なんでも、いいですから」

マスターは又洋服を手に取る。
それをジッと見ていた。

「これは?」
「はい、それでいいです」

そうすると予想外の事にマスターが不満そうな顔をした。
不安になる。何か、気に障ることかな。

「それでいいって何だよ、バカ」
「す、すみません」

バカ、うん。僕は本当にバカなのかもしれない。
マスターが何で怒ってるのかも理解できないまま謝ってる。
するとマスターの顔が緩む。
「別にいいんだけどさ、なんかそれでいいっての嫌だなって。レンの意見も聞かせてほしいなーと思いまして」

困った。
理由はわかったけど、意見、えっと。
ちゃんと意見がまとまらない僕をマスターはジーッとみていた。
恥ずかしさに耐え切れずとにかく喋る事にした。

「本当にそれでいいんです。えっと、すみません」
「もー!なにそれ!じゃあ」

続きの言葉がないまま、マスターは僕の手を引く。
着いた場所は女子用の洋服売り場。
辺りは勿論女子ばかりで、なんだか恥ずかしくなった。

「ますたあ、なんですか」
「じゃーあ、」

女子物のスカートが並ぶ棚へ移動する。
そのまま、白い記事にピンクのフリルがついたミニスカートを手に取り僕に見せ付ける。

「これは?何でもいいんならこれでもいいよね?」
「え、」

これ、ですか。
マスターの目が真剣そのもので冷や汗がでる。
確かに何でもいいって言ったのは僕だけどそこまでは予想していなかった。
明らかに女物。というか、こんな可愛い服マスターでも着てるところを見たところが無い。

嫌なんて言ったらマスターに嫌われるかもしれない。
それは、嫌だ。
けど、これを着る?
着たらマスター喜んでくれるのかな。
それなら僕は、でも、ええと

しばらく悩んで黙り込んでいる僕を前にマスターは一つため息をついて苦笑いを浮かべた。

「レン、嫌なら嫌って言わなきゃ」
「でも、嫌って言ったらマスター僕の事嫌いになる、でしょ」

申し訳なさそうに言うとマスターは僕の頭を撫でた。
「バカだなあ。嫌うわけないじゃん」
「でも」
「さっきも言ったとおり、レンの意見聞かせてもらえるほうが嬉しい、かな。うん」

微笑むマスターに安心する。
自分の意見を言っても怒らないんだ、マスターは。
当たり前のことで不安がってた自分が情けない。

「…えっと、僕、スカートはちょっと…」
「だよねー。OKされちゃったら困る所だった!でもレンなら似合うかもね?」

可愛らしく笑うマスター。
冗談きついって。
でも、マスターに褒められたってことで。

「どういう意味ですか」
「どうだろうね?じゃあ、レン、好きな服選んできて」

微笑むマスター。この笑顔は壊したくない。
僕は頷き一人で男子洋服売り場へ走る。
色んな服があって僕には無縁だと思ってた。
でも、並んでいる服を色々と見ているうちに心が躍る。
自分の一番似合う服選んで、マスターに見せる、っていう目的があるからだと思うけど、
服を選ぶのが楽しいとは思わなかった。

一着決めて、マスターに手渡す。
「これが、いいです」
「うん、いい服だねー。買ってくるから待っててね!」

視界から消えるマスター。
さっきまで浮かべていた笑顔で喜んでもらえたことがわかった。

そのまま買い物はすべて済ませて店から出る。
肌寒さが戻ってくる。

「いっぱい買っちゃったねー」
「ですね」

二人共両手が塞がるぐらい買出しをした。
手、繋げないなと考えると悲しくなる。

「早く帰って、お菓子作っちゃおうかー」
「はい」

早く帰る、っていうのが何か引っかかる。
時間が短くなる訳で、外出なんてめったにないし。

「マスター」
「んー?」
「あの、又買い物一緒に行ってもいいですか。あと、出かけたり、色んな場所」
「勿論!次はどこいこっかー」

よかった。
次の話なんてまだ早いよ、マスター。
でも、次の外出が楽しみで仕方が無い自分がいた。


その日は買出しに行って、僕が好きなバナナケーキ作って、初めての調教して。
上手に歌えたか自分ではわからなかったけど、マスターは喜んでくれたみたいだ。

色々疲れた一日だったけど、これから休日が楽しみになりました。


続く


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最後手抜きバレバレとかwwwwwww

スカート履かせたいよハアハア
早く休日なれよ畜生(´・ω・`)


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