It snows.

□#2
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きっとレンに会えたのも運命だね
レンが普通じゃないのも運命だね
レン、次の運命の人にちゃんと出会ってね
別れも運命なんだから

あれ このセリフどっかで聞いた

It snows_2

「それって、キミは普通のVOCALOIDじゃない、ってことかな?」
「そう。僕は普通じゃないんです」
「それ、どういう風に…」

僕は全て話した。
僕の苦労、想い、悲しみ、嬉しさとか。

あれ、僕悲しい訳じゃないのに。


「そっか。だからキミは普通のVOCALOIDになりたいんだね」
「そうです」

そっかー…と寒い空に消えていく彼女の声。
初対面の人に話してどうする?
なんで話したのかもよくわからない。
なんか、自然とこの人ならいいなって。

あれ、これが運命の人?

「私なら捨てたりしないのになー、なんて、」

へへっと赤くなった膝を抱える彼女が言った。

「じゃあ、僕を拾ってくれますか」

あれ、何言ってんだ。
この人はこの人なりの事情があるのに、迷惑かけるようなことして。
どうせ駄目に決まってるけど。

「あ、うん。今私の家に来ませんか?って聞こうとしたところだったんだ!以心伝心?ってやつ?」

え、いいのかよ。
なんだか変わった人だとは思ってたけど、
なんだろ。天然?

「ホント、ですか?」
「嘘ついてどーすんのよ」

そう言いながら笑った。
さっきまでの悲痛な声とはまったく違う、温かい声。
そのまま僕の手を引いた。

「私の家近いから、行こう?」
「は、はい」

そういえば誰かと手繋いだの、初めてだ。
でも彼女の手は冷たかった。

「あの、マスター、って呼んでもいいですか」
「勿論」
「じゃあマスター、どうして僕を拾ってくれるんですか」

歩くスピードが少し落ちる。
手を繋いだまま、マスターは考え込んだ。

「なんでだろうね」
「え?」
「なんとなく、運命感じちゃってさ」

「僕もです」

気づいたら口走ってた。
マスターは振り返り、小さく笑った。

「本当?やっぱり運命だ」

そう、なのかな。


しばらく歩くと白い家が見えてきた。
此処、かな、きっと。

マスターは立ち止まると「着いたよ」と笑った。
笑うの好きなんだな。
実際似合ってる。

「此処、ですか」
「うん。狭いし汚いし、期待しちゃ駄目だからねー!」

ドアノブに手をかけるとすんなり開いた。
鍵は掛かっていない様子。
危ないなあ。とか、心配になってきた。
忘れたのかな、マスターならありえる。

「どうして鍵かけないんですか?」

すると予想外に、笑顔が一瞬で消える。
でもすぐに戻ってきた笑顔は苦笑いだった。

「ある人がすぐに帰ってこれるように、ね。此処の鍵持ってないんだよその人。」
「家族か、誰かですか?」
「そのぐらい大事な人かなー」

マスターの大事な人、きっと大物だな。
いや、この人だからこそ一般人かもしれない。
そんなことを考えていると玄関が見えてきた。

「広いじゃないですか。それに綺麗に整理されてるし」
「そうかな?ありがとー」

白をベースにした綺麗な部屋だ。
特に家具がないせいか、広く感じる。
靴が少ししかない。人がいる気配もないし。
一人ぐらし?

「家族の人、は」
「家族はいないんだ。お父さんは死んじゃったし、お母さんは出て行った」

消えない笑顔のままで発する言葉はあまりにも悲しげで見てられなかった。
「それって」
「私も捨てられたってこと」

捨てられた。
笑顔なのに。凄く悲しそう。

「僕と同じですね」
「そうだね。同じだ!やっぱこれも運命?」

あれ。悲しそうじゃない。
不思議な人だな。

「レン」
「はい?」
「大丈夫、私は捨てないからね」
「…なんですか、急に」
「ん。なんとなくね」

どうして分かったんだろう。

今、この人は僕のことをいつか捨てるのかなって考えてたのに。

もしかして、運命の人だから?



続く


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