SS.CROSS ROAD ♯1

□ケミカルリアクション〜Episode 5〜
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※プロローグから順にお読み下さい。
※性的な表現が含まれています。自己責任で。


どんな甘い口唇より、お前の嫉妬の方が俺を酔わせる。


**********************


秀虎は、自分に近付いてくるヒロミから逃れようと首を捻った。
しかしヒロミは頭を掴む力を強め、逃がさない。

この男から、逃げられない事を嫌でも知らされる。

ヒロミの肩の向こうに、阪東の傷ついた顔が見えて、
秀虎は、居たたまれない気持ちになった。


何故だ?お前には、阪東がいるはずだろ…!?


秀虎はせめて、と。口唇をンと横に引き延ばして、
その艶やかな厚みを隠そうと努めた。


ぺろ。


「…っ…!?」
「びっくりした?」

秀虎の緊張を余所にヒロミは悪戯に笑う。

キスされるかと思い、目をぎゅっと瞑った途端、
秀虎はヒロミに鼻を舐められたのだった。

「…、な…ん…。」
「あはは、そんなに緊張しないで。」

本気なのか、ただの悪ふざけか。
ヒロミの出方が分からず、秀虎は困惑した。

「そんなガチガチじゃ、気持ちいいモンも気持ちよく無いよ…?」

呆気にとられる秀虎を見て、ヒロミがクツクツと笑う。

後ろで恋人が見ていると言うのに。悪趣味な趣向だ。

ヒロミは阪東に構う事なく、品定めの様に秀虎に目線を注ぐ。
もうヒロミの頭には、阪東という存在が綺麗に消え去ってしまっているのではないかと、
思わず疑ってしまう程に、その視線は情熱的なものだった。

何処か絶望的な気持ちになりながら、秀虎は目を閉じて俯く。

「そんな顔しないで下さいよ。せっかくの美人が台無し。」
「ヒロミ…もう、よせ…。」

秀虎は気丈にヒロミにだけ聞こえる様に小さく叱咤した。

すると、何を思ったのか。ヒロミも声を潜めてきたのだ。

「それはアイツ次第なんスよ…秀虎さん。」
「!?」


アイツ…???…まさか。

秀虎はヒロミの意図をこの行為によって全て悟った。
ただ、ヒロミは拗ねて、阪東を試しているだけなのだ。

先程、阪東から拒絶されたヒロミ。
彼だけは自分に絶対の愛情を持っていると信じて止まないヒロミは、
その拒絶は、許せるものでは無かったのだろう。
まるで、甘えて差し伸べた手を振り払われた子供の癇癪だ。

正直、阪東の方がヒロミに惚れていると思っていた。
だが、そんな事は無かった。相手に依存しているのはヒロミの方だ。

なんて歪んだ愛情なのだろう。
自分を拒んだその報復に、彼は故意に阪東を突き放したのだ。
阪東の、自分への愛情を確認する為だけに俺を利用しているんだ。

恐ろしい男だ、と。秀虎は再び近付いてきた、
キスするつもりなんて微塵も無い口唇に目を潜めた。



「ッ…ヒロミ!」

あと、少し。の所で阪東の声が二人の間を裂いた。
阪東のその声を予想していたヒロミの口唇は、寸ででキチンと止まった。

「なに?阪東。」

阪東のその反応に、ヒロミは心底嬉しそうで。
しかし、その顔を阪東に見せるつもりは微塵も無いらしく。
後ろを振り向かないまま、秀虎の目の前でその口唇を笑みで形良く結んだ。

「……や、めろ。」
「…何で?アンタが嫌って言ったんだろ…?」
「っ、いいから…こっちに来い…。」

素直じゃない言葉に、ヒロミは困った様に笑い、
『じゃ、お邪魔しました。』と、秀虎からアッサリと手を離した。


ヒロミがスタスタと元の場所に戻る。

阪東の横に座って、その顔を覗き込んだ途端。
ヒロミの頬が、阪東の掌に軽快に弾かれた。

しかし、ヒロミはそれに対して殴り返さず、
その振り下ろされた阪東の平手を掴むと、その細い腕にカプと歯を立てた。

そして、痛みに怯んだ阪東の頭を力強く抱き寄せ、
情熱的なキスを阪東に仕掛けていった。


秀虎はヒロミの背中に回った阪東の腕を見ながら、

愛情表現も十人十色なんだな…?と首を傾げた。




「あれでも、仲良し…なんスよね?:

ヒロミと阪東の愛憎劇に、背中の木場も目を丸める。

それで、ようやく思考を戻した秀虎は、
木場が他の男に自分の口唇を勝手に許した事を思い出した。


「……木場。」
「はい?」

急に低くなった秀虎の声色に、
酒で頭が鈍った木場が気付くはずも無く…。

秀虎は、自ら突き立てられたままだった木場の楔から逃げると、
驚き顔の木場を、そのまま床に押し倒した。

「え?え?秀虎さん??」

大好きな秀虎に、急に押し倒されて。木場は何事かと、目を白黒させた。
秀虎が積極的なのは嬉しいのだが、でもその笑顔が何処か怖いものの様で…。

秀虎は、そんな戸惑う木場の腹に乗り上げ、
尻に当たる反り立ったモノに再び腰を沈めていった。

「わっ、…秀と…ら…さんっ…!!」

迎え入れた途端。秀虎の腰の奥で、ビュク…と熱いものが弾けた。
ソレを多量に注ぎ込まれた秀虎はンッ…!と、口唇を噛んで流動に耐える。

「はぁ…はぁ、…気持ち…良かッ…、いっ!??」

熱い息を吐きながら、出し切った快楽に酔う木場。
秀虎はその無防備な時を狙って、木場を含んだまま騎乗で腰を揺らし始めた。

「あっ、わ…!ひ、秀虎さ……!??」

達したばかりの状態を、柔らかい内壁で擦られて木場は悲鳴を上げる。

尚かつ、この体位は視覚的にもマズかった。
秀虎が自ら、なんて。木場にとっては鼻血モノで。

何から何まで搾り取られてしまう、と。木場は一種の恐怖心に狼狽えた。

「わわっ…ちょっ、秀虎さん…!待っ…痛っ!ま、待って下さい!!」
「うるさい。お前はお仕置きだ。」
「や、ホント…そ、それ以上はっ…もう俺、出ねぇッスからっ…!!」
「若いんだ。まだいける。」
「ひ、秀虎さああぁあぁん!!!!」

突然の逆レイプに、木場の悲壮な叫び声が室内に木霊したのだった。






その可哀想な木霊と同時に、甘い叫びをこの部屋に響かせている者が居た。
忘れてはいけない、あの2人。


リンダは春道が強請るまま、優しくも酷くも抱いてやった。
…ある条件を除いては。

「あ、も…、イ…きたい…。」

盛りのついた猿の如く、とっとと挿入に持ち込んだ他の二人とは逆に、
リンダはじっくりと春道の身体を味わっていた。

春道が、此処を舐めろと言えば口に含み、触れと言ったら触ってやった。
しかしリンダは、肝心の部分には一向に触れようとせずにいた。

ヒクつく入り口は撫でられるばかりで、欲求は奥に篭もるばかり。
それがもどかしくて、春道は何度もリンダに強請ったのだが。
このおねだりだけは聞き入れて貰えなかった。

我慢も限界で、自分で慰めようとしても、
リンダに目敏く見つかっては、手を掴まれて叶えさせて貰えない。

春道が、どんなに泣きそうになっていても、
リンダは構わずに、焦らし続けていた。

「りん…だ…。」
「どうした?酷いのが好きなんだろう?」
「ち、…がう、も…意地悪なのやだ…。」

春道はふるふると頭を振ると、リンダの手を自分の蕾に押しつける。

ここを触れ、と。ここに早く入れて欲しい、と。
恥ずかしがり屋の春道が、ここまで欲しがる事は今まで見た事が無い。

酒の力は恐ろしいな…とリンダは思いながらも、
聞き入れる事を拒絶する意味を込めて、その手を振り払い、
可愛い我が儘を言う春道の入り口は再び撫でるだけに留めた。

「っ、…!ま、た……?」
「この程度で音を上げて貰ったら困る。」
「も、…う、…我慢できねぇのに…!!」

他のみんなは、とっくの昔に気持ちよくして貰っているのに。
耳を犯す、余所の嬌声に春道はもじもじと腿を動かす。

入り口を撫で続ける指先が、もどかしくて。
欲しい、欲しいと聞き分けの無い子供の様に呟きながら、
春道はリンダの膝の上で、はしたなく腰を揺らしていた。

「も、シて…くれよぉ…。」
「酷くしろと言ったのはお前だ。」
「むうぅ〜…。」

とろけた瞳のまま、春道が、ぷぅとむくれる。
そんな仕草がいちいち可愛い恋人に、リンダはぐらりと眩暈を覚えた。

何だかんだ言っても、リンダは元々春道に甘い。
強請られるまま突き上げてやろうかと思ったが、
こんなチャンス、早々に手放してたまるかとリンダは密かに自分を律した。

セックスで、こんなに積極的に、
欲しがって甘えてくる春道は初めてなのだ。
リンダだって、愛しい春道の痴態に何度も限界を感じはしたが、
もっと泣かせてみたい、とか。もっと甘えさせたい、など。
どちらかと言うと、この滅多にない現象を楽しむ事に懸命になっていた。

それにグズグズとむずがる春道は、大変大変可愛らしくて。
もうちょっと焦らしたい欲求をリンダは無視出来なかった。

秀虎も阪東も目を見張る顔立ちをしているが、
やはりコイツには敵わないな、と。リンダはすっかり、
親バカならぬ春道バカに成り下がっていた。



「うぅぅ〜〜〜…ひろみ!きば!」

春道が突然、余所でお楽しみ中であるヒロミと木場の名前を呼んだ。

ご機嫌取りに、阪東を甘やかしている最中のヒロミも、
秀虎お仕置きタイムの真っ最中である木場も、何事かと顔を向けた。




「リンダの代わりにどっちか相手してくれ!」



「え?」
「なっ、…!?」
「!??」
「マジ、か?」


な、んだと…。

春道の発言に其処に居る全員…主に年上達が目を見開いた。
でも一番驚いたのは、リンダである。
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