SS.QP ♯1

□クレイジー★ナース
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※性的な表現が含まれています。自己責任で。
 それと女装ネタです。ご注意を。


「何やねん…。」
目線の先に、相棒のトムとソレを捉えたワシは玄関先で固まった。

実は、今日は二人で決めた相棒トムの誕生日だ。
こうやって、祝ってやる為に色々と買い込んできたんやけど。
しかしながら部屋に入った途端、目の前の光景に思考が停止する。

「おお、ジェリー!待ってたでぇええ!」

ワシが現れた途端、顔をぱぁっと明るくして。
座っていた状態から起立して、転がるようにワシん所に飛んで来た。
尻尾でも生えていたらバフバフ振っているに違いない、この懐き様。
何やねんな。ワレは犬か。

そんなワシにお構いなしで、トムはぎゅーっと抱きついてきた。

「…ちょ、ちょい待ちィ!!」
「待たへん。」

もがもがともがくワシの言葉をトムは綺麗に無視して、
抱き締める手を、なおも強めた。

「ジェリーの匂いや…。」
「っ…!?」
「くくっ。耳、ホンマ弱いなぁ。」

耳元で喋られて、背筋がぞわっとあわ立つ。
その反応を見た相棒が、くすくすと笑った。

こんなにチャラけたアホウでも、ワシにとっては、
一番信頼が置ける相棒であり、最愛の恋人や。
その恋人に甘く囁かれて、感じるなっちゅー方が無理な話や。

「ってぇ…取り敢えず離れんかいアホウ!!」
「ぐふぅっ!!」

渾身の拳がトムの鳩尾に入る。
トムより細腕とは言え、ワシかて殺し屋家業に置く身。
ある程度の体術は心得とるつもりや。
そのおかげで、ようやっと丸太の様な腕が外れた。

「わ、ワレ…ほ、本気出しおったなぁ…!」
「当たり前や!アホウ!」
「き、利いたでホンマ…あいてて…。」

色々と文句を言いたいところだが、ぐっと堪える。
コイツには、ぎょーさん聞くことがあんねや。

「何やねんアレは!」

その物体が、何故この部屋にあるのか。

ワシの指先には、真っ白なナース服が、
ハンガーにぶら下がって、ひらりひらりと靡いていた。


**********************


「ええやろ〜コレ〜。」
トムがにぱにぱと溢れんばかりの笑顔を振りまく。

「今日の標的がな、ほらあの、店の金を持ち逃げした奴。」
「あぁ、あの件か。」
「そうそう。その件の雇い主がな、イメクラ店経営しとってな。」

報酬貰いに行ったときにな、丁度置いてあったもんやから。
これも貰ってもええでっか?って聞いたら、ええっちゅーからな。

「貰ってきたねん!!」

えっへんと、得意げに胸を張って、トムは目を眉ごとだらしなく垂らした。

あかん…ワシ、頭痛くなってきたわ…。
こいつ…絶対にアホや。何こんなコスプレ衣装まで強請ってんねん…。
今後の、仕事の発注が減らなければええけどな…。

「つーことで、ワシは患者さんなんよ。」
「は?患者?」
「うん。でな、ジェリーは看護婦さんや。治す人や。」
「ほう…。で?」
「お医者さんごっこしよ。」
「んん?もう一回言うてみ…?」

俺は滅多に作らない笑顔でトムに再度問いかける。
今、とんでもない事を聞いたような気がしたから再確認ってやつや。

「せやから〜ワシ患者さんな?」
「おう。」
「ジェリーは、看護婦さん。」
「おう。」
「っちゅー事で、早よこれに着替えや。」

ばしっ。

「あだっ!!」

どさくさに紛れてワシのシャツのボタンを外そうとした不届きな手。
ワシは、それを思いっきり引っぱたいてやった。

「なんや!ぼ、暴力反対やでっ!!」
「殺し屋のキサンがソレを言うな!!」

やはり、先ほど聞こえた事は気のせいやなかったらしい。
気のせいやと思ったのになぁ……むしろ思いたかった…。

つまり、ワシとお医者さんごっこたるモノをしたいが為に、
あのナース服を用意して、ウキウキとワシの帰りを待っていたらしい。
アホや…ホンマのアホや。開いた口が塞がらへん。


つーか、それ。やっぱワシが着るんやないか…。


「なんやー看護婦さんは男のロマンやんか〜。」
「そんなロマン知らんわ!ボケ!」

そんな恥ずかしいモン絶対嫌や、とも付け加える。
すると、トムがしゅんと小さくなった。上目遣いでぷうと膨れる。
こういう所が子供っぽくて…なんちゅーか…弱かったりする。
トムは図体がデカい上に愛嬌があるせいか、母性本能をくすぐる部分がある。
くそ。そんな顔して甘えられたらイヤって言えなくなるやないか、ボケ。

「…な、何やねん。」
「ワイ…誕生日やのに。」

う…。
そう来たか。ちゅーか、そう来るつもりやったんだろう。
誕生日やから。特別な日やから。言う事聞いて。そんな作戦。

……あーあ、もう。しゃあない奴やな…。

仕方ないとか言って、了解してまうワシもワシやけど…。
そんなことは棚にあげて。ワシはげんなりと肩を落とした。
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