SS.QP ♯1

□せかいのうた
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「ノストラ何とかの大予言って昔あったなぁ…。」

情事後。部屋で二人くつろいでいるときに、
相棒のトムが横で口を開いた。

ああ。確か世界が滅びるとか、そんな予言を後世に残した予言者や。
ま、結局。世界は滅びなかったわけやけどな。

「お前は信じとったか?」
「別に。」
「何やねん!もっと食いついてくれてもええやないかっ!?」
「知らんわ。だいたい、信じるもなにも当たらへんかったやないか。」
「確かに世界は滅ばんかったけど…。」

ワシのどうでもいいような返事に相棒が横で頬を膨らませた。
子供のようなその反応に口元が緩みそうになるのを堪える。

「せやけど…」
子どもの様な、その表情が少しだけ陰る。

「考えてみぃ?その年にな、ごっつ悲しい思いをした人がおるとするやろ?」
「…は?」
「そいつにとっては、予言は当たったっちゅー事になるんやないか?」

ポツリと相棒の口から零れた言葉。今度はこちらが驚く番や。

「世界が破滅するか、しないか。そんなんやなくて…。」


例えば。

身近な誰かが側から居なくなったりとか…。


「……トム…?」
「へっ…。悪い、なんでもあらへん。」

トムが笑って、ワシの肩に擦り寄ってきた。

「……幸せって怖いなぁ…ジェリー?」
「何いうてんねん…。」
「怖いで…?ホンマ…。」

この傍の温もりは消えて、愛しいあなたが居なくなる。
そのとき、私の世界は破滅する。
そんな事を誰が予想できるだろうか。

予言者は何のために、あの言葉を残したのだろう。


END
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