SS.WORST ♯2

□柳さんに胃薬を〜其の伍〜
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わかっている。わかっている。
コイツが俺に対して、甘えているって事位は。



「やなぎー、これ捨ててくれー。」

うだうだと差し出されたのは、空のペットボトル。
男への甘え方を熟知しているお前は、なんて罪深い小悪魔なのだろう。

「おい…ゴミ箱すぐ其処にあるじゃねぇか。」
「面倒。」
「面倒って…。」

そんなブツクサ言いながらも言う事を聞いてしまう俺。
ああもう…本当に健気な奴だ俺は…。

ゴミ箱にソレを放ると、ぺこんと情けない音がした。
何だか今の俺に凄く似合っていて笑えない。

そんな俺の苦悩なんか露知らず。
ウチの女王様は今度はストローで遊びだした。
テーブルにストローをだるだると並べている。

誰にでも慕われ、愛されている好誠。
しかし、テリトリーに入れた人間には、かなりのマイペースだ。

あんなに熱望していた、好誠のテリトリー。
入ってみたら意外にも苦労の方が多かったという、よくある話。

親しき仲にも礼儀あり。そんな言葉は彼の辞書には無いらしい。
まぁ、俺の場合は惚れた弱みでってヤツなんだが…な。


精一杯の思いを伝えたのは何時の日だったか。

未だに返事を貰えずに有耶無耶にされている、可哀想な俺。


「なぁ、なぁ。」

ふいに呼ばれて今度は何だと振り向くと、チョイチョイと手招き。
どうも隣に座れと言っているようだ。

言われた通りに、椅子を引いて隣に腰掛ける。

「どうしたんだ?」
「相合傘。」

見ると、俺らの中心にはストローで作られた相合傘。

「あ、あいあいが…さ?」
「そ。こっち、俺。そっち、お前。」
「そ…その片方に俺はわざわざ呼ばれたわけ、か…?」
「うん。」
「それは…その、…どういう意味で…?」

そんな俺の質問に、くすくす笑う好誠。

あ。また、はぐらかされた。




嗚呼、神様。

女王様のテリトリーは相変わらず困難がいっぱいです。

END
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