SS.WORST ♯2

□GO BACK CANDY HOUSE
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「あ。好誠、アメ食うか?」
「お、サンキュー。何味?」
「あー、味は色々あるからな。何が出るかわかんね。」
「ふーん。」

好誠がブリキ製の四角い缶をガラガラ振る。
そうやっていると皆に恐れられている頭も、子どもみてぇだな。

ころん。

好誠の手の平に転がったのは黄味がかった透明色のアメ。

「何味だ?これ。」
「さあ…レモンとかじゃねぇの?」

好誠は特に気にする事なく、口の中に放り込む。


「…!」

途端、好誠の形の良い眉がつり上がった。

「うえ。これ、ハッカだ。」
「え?嫌いだったか?」
「う〜…あんまり好きじゃねぇ。」
「じゃあ…」
「やなぎぃーーー!」

それ口から出して他のを…と言い掛けたが。
好誠は、既に柳の名前を呼んでいた。
何でそこで柳を呼ぶのか。ハテと首をかしげる。

「どうした?好誠。」

何ごとかと柳がすぐに駆け付けてくる。
そりゃあ、頭が呼んでいるんだから当たり前か。

「柳、こっち!」
「おいおい…何だよ突然。」

険しい顔で手招きする好誠に柳が近付く。
そして近付いて来た柳の首に、そのしなやかな腕が絡んだ。

「んん!?」

そして、そのまま好誠は柳の口唇に噛み付いた。


な、生キス!??


「な…こ、好誠!?」
「だって、ハッカ嫌なんだよ…。」
「だ、だからって…お前なぁ…!!」

反論とアメを同時にもごもご口で動かす柳。
ここに居る俺にメチャメチャ気を使っている事が背中だけで分かった。

えっと。ウチのお頭の嫌いな味のアメちゃんは、
どうやら余所の場所に移動したらしいです。




…俺の目の前で。




しかも、口移しで。




「源次〜。」
「…!?」

柳の肩越しに、好誠が笑顔を向けて来た。
でも…目の奥は笑ってない。メッチャ怖ぇえええ!!

「みんなにさ…2時間ほど此処入ってくるなって言っておいてくんねぇ?」
「へ?」
「俺は、柳に話があるからよ。な?」

そう言って、狼狽える柳の肩に、ぽふと顎を乗せて。
好誠はにっこりと艶やかに笑った。




お前ら、絶対今から此処でヤる気だろうが…!!!




**********************



痛みだしたこめかみを抱えながら、俺は大人しく外に出た。

好誠の『入ってくるな』は『邪魔したら殺す』って事で。



いいんだ。いいんだ。

恋愛に制限なんてねぇ。恋愛は自由だ。うん。

ヘッドと副ヘッドがデキていても。

何も、何も問題はねぇ。うん。




………………空が…青いなァ…。




「ん?どうしたんスか?源兄ィ。頭は居るんで?」
「鉄生!!入るな!2時間は入るな!!」
「え、えええ?何でですか?」
「入るなら俺を倒してから行けえええ!!」


武蔵坊弁慶よろしく、入り口の前に俺はずっと立ちはだかった。



結局。

好誠から入室の許可が下りたのはたっぷり3時間経った後だった。


END
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