SS.WORST ♯3
□ワガママーチ
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光政と喧嘩をしてしまった。
喧嘩、と言うよりも、俺が一方的に光政にキレられた。
当の光政はどう思っているかは知らないが。まぁ、俺たちにはよくある事だ。
一度へそを曲げた光政は、放っておくに限る。
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「お届けモノでーす。」
そう言って現れたのは、すやすやと眠る光政をおぶった松尾だった。
「?…何だ?」
「だから届けモンだって。早く受け取れよ。」
「何を?」
「光政に決まってるだろ?お前は光政の保護者じゃねーか。」
「誰が保護者だ。誰が。」
どうやら光政のせいで身内に可笑しな風潮が蔓延している様だな。
俺は頭痛を覚えながら、溜め息をつく。
「俺らは今喧嘩中だ。余所を当たってくれ。光政も起きて俺が居たら気まずいだろ。」
「あ?でもメモ貼ってあったぜ?」
「メモ?」
「おうよ。ほら。」
光政をおぶったまま、松尾がくるりと背中を向ける。
そうしたら光政の背中には一枚の画用紙がペタリ。
…そのメモの内容は、こうだ。
俺を見つけた奴へ
見つけたらそのまま抱えて小野輝騎に届けるか、ここまで呼ぶ事。
バカ輝へ
俺が起きたら、お前から謝る事。以上!
「何だこれは…。」
「まぁ大将がこう言ってンだからよ。…っつー事で、宜しくな。」
松尾がひょいと光政を抱え直し、俺の背中に押しつけてくる。
ちょっと待て。光政が一方的にキレたのに俺から謝るのか?
挙げ句の果てに、『バカ輝』呼ばわりだしよ…。
つーか、俺…いつからこんなにお人好しになったんだ?
光政を支えながら、俺はげんなりと肩を落とす。
「あ。受け取りサイン、しておくか?」
「誰がするか。大体、両手が塞がっている。」
「あっはっは!違いねぇ!!」
松尾はそんな俺の言葉にガハガハ笑うと、
俺の頭をペチンと叩いて、その場を去っていった。
松尾の野郎…俺が抵抗出来ない事を良い事に…。
青筋だったこめかみを、ひくひくと震わせていたら、
背中の荷物がムニャムニャと首に抱きついてきた。
「ったく…お前には敵わねーよ。」
背中に、規則正しい呼吸音を聞きながら。
落ちそうになっていた光政を上へと振って、
俺は安眠の体制へと立て直してやった。
END